バナナでもわかる話

開設当初は計量経済学・統計学が専門の大学院生でした。今はデータを扱うお仕事をしています。統計学・経済学・投資理論・マーケティング等々に関する勉強・解説ブログ。ときどき趣味も。極力数式は使わずイメージで説明出来るよう心掛けていますが、時々暴走します。

時系列解析とは?時間の多項式トレンド(polynomial trends)を使った基本姿勢、計算方法とRコードの解説

そういえば時系列に関する話、あまり書いていないなと思ったので記事にしていこうと思います。

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時系列とは?

まず、簡単に時系列とは何かっていう話ですが、例えば株価とかを考えてもらうと、時間の経過とともに何か値が連動して変化していますよね。
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こういうのを時系列データと呼びます。


時系列解析の種類

時系列解析では大きく分けて二つの動きを考えます。

トレンド

「上がったり下がったりすれど、大きく見ると時間と共にじわじわ増えているよね~」だとか、「じわじわ下がっているね~」だとか考える時、人はトレンドを考えています。

要は何か一定の周期があったりするわけではないけども、大雑把に見ると時間と共に流れる推移が見えるような場合ってありますよね。その傾向は大抵そのまま続くものです。

このような大きく見た時の傾向をトレンドと呼びます。


周期

一方、何かしらの影響が背後にあって、一定の範囲で周期性があるような動きを周期と呼びます。
例えば、日本の気温の推移を考えてもらえばいいと思うんですけど、

春から夏にかけてどんどん気温が上がっていき、秋、冬にかけて気温が下がっていく、そしてまた春になって同じような動きをする


こんな動きを周期と呼んだりします。


時系列解析ではこの周期とトレンドの二つの観点からものを考えていきます。
例えば気象庁のサイトには日本の平均気温のグラフとして下のようなものがあったりします。


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(気象庁 | 日本の年平均気温より)

この赤い線がトレンドで、上昇傾向にあります。


時系列の基本スタンス

確かに直感的にも時間を伴うデータは大きなトレンドと周期に分けられそうですよね(?)。

とよく説明されるわけですが、正直思いとしては

せめて周期(適当な規則性)がないと、予測も何も出来ないからそれくらいの仮定は設けさせてくれだと思ってます。

だってトレンド(大きな傾向)もなくて、周期(適当な規則)もない各時間ごとに1回こっきりしか観測されないデータを予測するなんてそもそも無理ですよね。だから無理のないやつを予測対象におきたいわけです。

そんな思いがあるわけなので、時系列解析を行う場合には大原則として注意点があって、

「そもそもこのデータには、大きな傾向や規則が生じうるのだろうか」

ということを考える必要があります。

基本のトレンドモデル

前置きが長くなりましたが、今回はそんな時系列解析の内、トレンドを表現するモデルを説明していこうと思います。

トレンドの予測にも色々あって、例えば企業の利益や株価等の経済データを考えてもらうと、これらのデータは大抵は上昇トレンドを持っています。これは何故かというと、基本的に経済は時間と共に成長を続けているはずなので、その成長に連動して、各企業の利益や株価もじわじわ増えていくことが関係しています。

※当然例外はあります


このように背後の要因がわかっているような場合は、経済成長を示すような指標を使うことで株価のトレンドなどを推定することが可能です。

しかし、当然何かトレンドはありそうだけど、背後の要因が何か検討もつかないなんてこともあり得ますよね。

でも私たちは時系列解析を行う以上、確実にトレンドに関係しそうな情報を1つ持っているわけです。それが

時間

です。


そこで、(本当はもっと本質的に関係しそうな情報を使うのがベストだが)データに関して何の情報も持ち合わせていないときに、とりあえず時間の推移を軸に、多項式近似モデルを作って、トレンドを推定してやろうというトレンドモデルが存在します。

それが次のようなモデルです。


時点 tの予測したいデータを y_tとおく。その時パラメータ \alpha_0,....\alpha_qを使って次のような q次多項式でトレンドを近似する。

 y_t=\alpha_0+\alpha_1 t+\alpha_2 t^2+...+\alpha_q t^q


当然、完全にこの式にピッタリフィットするはずがないので、確率的な誤差 \epsilon_tも与えておきます。

 y_t=\alpha_0+\alpha_1 t+\alpha_2 t^2+...+\alpha_q t^q+\epsilon_t


ちなみに、先ほどの気象庁のグラフのトレンドはこれの q=1を利用しています。1次関数が右上がりになっていましたよね。


簡単そう

なんだ!よく見たらただの線形回帰じゃないか!簡単そうですね!!と思うかもしれませんが、確かに q=1なら線形回帰ですが、 q≧2ではそう簡単にいかないことに注意してください。


線形回帰分析の仮定として説明変数間の無相関仮定があったはずです。しかし、 t t^3ってどう考えても相関ありますよね。

そこで、先ほどの式を無相関な説明変数が並ぶ形に書き換える必要が生じます。


無相関な関係

そこで、次のような条件を満たす \phi_{iT}(t)に説明変数を書き換えるという操作を行います。

 \sum_{t=1}^{T}\phi_{iT}(t)\phi_{kT}(t)=0
ただし i≠k, i,k=0,1,....T-1

これは直交条件と呼ばれていて、要は説明変数間はこの仮定を満たす必要があると思ってください。

 \phi_{kT}(t) tを使って表すために、次の多項式で表現することにします。
 \phi_{kT}(t)=t^k+X_{k-1}t^{k-1}+....+C_1 t+C_0

この C_?を求めることが出来れば、説明変数の書き換えを行えますね。



ここで、直交条件が成り立つということは、次の条件が成り立つことがわかりますか?
 \sum_{t=1}^{T}\phi_{kT}(t)t^i=0
ただし i≠k, i=0,1,....k-1

要は先ほどの式に放り込んでみると、 k以外の tの何とか乗を掛けて全部足せば0になるという形にならねばならないことがわかります。

よって、先ほどの関係式
 \phi_{kT}(t)=t^k+X_{k-1}t^{k-1}+....+C_1 t+C_0

に対して両辺に \sum_{t=1}^T t^iを掛けてやると
ただし i≠k, i=0,1,....k-1



次のようになりますよね。

 C_0 \sum_{t=1}^T t^i+C_1 \sum_{t=1}^T t^{i+1}+....+C_{k-1} \sum_{t=1}^T t^{i+k-1}=-\sum_{t=1}^T t^{i+k}
ただし i≠k, i=0,1,....k-1

何かゴツゴツしていますが、まず k=1とおきます。すると i=0となるので式は次のようになります。

 TC_0=-\sum_{t=1}^T t

よって C_0=-\frac{T+1}{2}だとわかりますよね。

次に k=2を考えると C_0がわかっているので C_1が求まります。以下同様に繰り返せば全ての C_?が求まりますよね。

このもとまった C_?を活用して、


 \phi_{1T}(t),....\phi_{qT}(t)を用意し、


 y_t=\alpha_0+\alpha_1 t+\alpha_2 t^2+...+\alpha_q t^q=\gamma_0+\gamma_1  \phi_{1T}(t)+.....+\gamma_q  \phi_{qT}(t)

という問題に書き換えることが出来ました!というわけです。これなら線形回帰を行うことが出来ます。

Rで実装

このトレンドモデル、正直かなり古いモデルなので恐らくRのパッケージにはありません。そこで今の手順をそのままコードに直してみました。

###値の設定、tは時間,degreeは多項式の次数
###ここはデータに合わせて変更する
t=1:30
degree=3
###
#expl_matに変換した説明変数を行列形式で突っ込む(tと次数の分だけ増える)
expl_mat=matrix(,length(t),degree)
for(tt in t){
	
	k=1:degree
	phi=c()
	Coef=c()

	i=(k-1)
	for(kk in k){
		ii=i[kk]
		ti_mat=matrix(,length(t),kk+1)
		for(iii in ii:(ii+kk)){
			ti_mat[,which(ii:(ii+kk)==iii)]=t^iii
		}
		ti_seq=colSums(ti_mat)
		if(length(ti_seq)==2){
			Coef[1]=-(length(t)+1)/2
		}
		else{
			mti_seq=ti_seq[-((length(ti_seq)-1):length(ti_seq))]
			Coef[kk]=(-ti_seq[length(ti_seq)]-sum(Coef*mti_seq))/ti_seq[length(ti_seq)-1]
		}
		phi[kk]=sum(c(1,rev(Coef))*(tt^rev(seq(0,kk,1))))
	}
	expl_mat[tt,]=phi
}


力作!笑

さて、一応合っているか確認してみましょう。もし、変換が正しければ次数さえ真のデータとあっていれば変換前と変換後で値が完全一致するはずです。

#真のモデルが3次多項式のデータを作成
y=0.3+0.5*t+0.5*t^2+0.5*t^3

##間省略、先ほどのコードにdegree=3を突っ込みexpl_matを作る
##浮動小数点の関係で小数点以下までは一致しないので丸め込み(round)して同じ値かどうか確認

> round(expl_mat%*%coef(lm(y~expl_mat))[2:4]+coef(lm(y~expl_mat))[1])==round(y)
      [,1]
 [1,] TRUE
 [2,] TRUE
 [3,] TRUE
 [4,] TRUE
 [5,] TRUE
 [6,] TRUE
 [7,] TRUE
 [8,] TRUE
 [9,] TRUE
[10,] TRUE
[11,] TRUE
[12,] TRUE
[13,] TRUE
[14,] TRUE
[15,] TRUE
[16,] TRUE
[17,] TRUE
[18,] TRUE
[19,] TRUE
[20,] TRUE
[21,] TRUE
[22,] TRUE
[23,] TRUE
[24,] TRUE
[25,] TRUE
[26,] TRUE
[27,] TRUE
[28,] TRUE
[29,] TRUE
[30,] TRUE

というわけで、正しいコードを書くことが出来ました。
これで簡単に多項式トレンドを考えることが出来ますね。


多項式トレンドの使い方

まず、あまり次数を増やすとフィットはしますが、解釈が難しくなるので、次数は小さい方が望ましいです。
最も解釈しやすいモデルが1次式のため、気象庁ページも1次式を採用しています。

普通、次数を決める際は複数の次数で回帰を行ってみてその結果で決めます。その辺りは今回は省略しますが、仮説検定を行う方法や、AICを使う方法、stepwise法等色々あります。



ということで、時間だけを使った多項式トレンドモデルの説明をしました。次回また別の時系列について説明しようと思います。

価格競争は悪手中の悪手

よく、「他社より安く」なんて話を聞きますが、特殊な状況でもない限り基本的に価格競争は行うべきではないと言われます。


今回はその話をします。


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基本設定

簡単な状況を考えてみます。
商品Aを作るのに300円かかるとします。
これを900円で売ることで、今600円の利益を出しているとします。

競合の設定

ここで、急に競合が現れ、商品Aと全く同じ商品Bを売り始めたとします。
この商品Bを作るのにも300円かかります。
これを900円で売ることで、今600円の利益を出し始めました。

消費者目線

消費者的には商品Aでも商品Bでもどちらでもいいので、現状より安いものを購入したがるとします。

全く同じではなくとも消費者目線からしたら「別にどっち買っても良い」と思える商品なんていっぱいありますよね。


そこでぱっと思いつくのは「商品Bより安く売ってやろう」みたいな戦略です。


価格競争の発生

標的顧客も同じで、市場の取り合いをしているような状況で、商品のクオリティや宣伝ではなく価格で勝負しようと考え、競合もそれに乗っかることで価格競争が発生します。
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互いに譲らず価格競争の結果、ほとんど利益が出ない価格まで落ちてしまいました。
しかも、結局価格競争を行う前の方が利益が高いですね。



価格競争に陥ると理論上このような結果になってしまうので、価格競争は悪手だと言われるわけですね。


まあ実際には流通チャネルや固定ファンの存在等様々な変動要因がありますから、価格の違いだけで購入者0人になるなんて状況はまず無いわけですが、少なくとも価格競争で理論上の結果と似た状況に陥ることは容易に想像できると思います。

双日(株)【2768】は初心者でも買いやすい有望株?

歴史的な総合商社である「双日」ですが、よくよく見てみると安くて買いやすいし、良い株だなあと思ったので紹介します。

 

 

 

 

まず、簡単にチャートを見てみます。毎度のことながらquantmodパッケージを使います。

株取引には必須?Rのquantmodパッケージで簡単に株価データを取得する方法 - バナナでもわかる話

 

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2年間のチャートです。単純にずっと増えています。

 

しかも横の軸を見てほしいのですが、1株が安い!現在も420円近辺で、100株買っても4万2千円です。

 

 

ちなみに昔やった統計的リターン分析をやってみると次のようになります。

ソフトバンクの株価の分析を簡単にやってみる - バナナでもわかる話

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ヒストグラムで見ても難しいですね。0周辺だけで見ると負の値に寄っていそうですが、負よりも正の領域にバラついています

 

リターンの平均と標準偏差はこんな感じ

mean(return) 0.0008831295

sd(return) 0.01736726

 

平均リターンはほぼ0ですね。細かい刻みで取ったデータなので、デイトレード対象としてはイマイチのようですね。

 

ただ、チャートから眺める限り、中期投資としては悪くなさそうです。

 

また、配当利回りは2.6%。平均よりも高いけど、高すぎるわけでもない数値ですね。前回あまりに高い配当利回りに注意しろと言う話は前にしました。

投資初心者は高配当利回り株には手を出すな - バナナでもわかる話

 

 

 とにかく初心者でも気軽に買える額ってのが良いですね。

しかもデイトレよりは中長期投資に向いているというのも初心者向けって感じです。

 

 

(株)ALBERT【3906】の株価上昇が止まらない件

ALBERTっていうAI・データサイエンス系の企業があるんですが、この企業の株価の爆上がりがいつまで経っても終わらないともっぱらの話題なのでそろそろ記事にしておきます。

 

 

 

 

(株)ALBERT【3906】とは

公式サイトはここです。

www.albert2005.co.jp

 

AI人材の育成とデータソリューション事業に力を入れている企業です。

今話題のAI株ですね。

 

優秀なデータサイエンティストAI人材を社内に持ち、そのノウハウを使って企業のAI事業のサポートサービスやデータサイエンティストの教育サービスを行っています。

AIビジネスはこれからもどんどん出てくるはずなので、長期保有も良いかもしれませんね。

 

 

 

株価推移を見てみる

今年の4月時点では1株2000円ほどだったのにもかかわらず、現在ひたすら上昇を続け、現在14000円前後を推移しています。

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破竹の勢いですね。

 

そろそろ止まるか?と思いきや、最近また東京海上日動との業務提携を発表したことで上昇を継続。

東京海上日動×ALBERT、損害保険のデータ分析とAI活用で業務提携 | マイナビニュース

 

また、新サービスとして画像認識サービス「タクミノメ」の開始。

AI・画像認識サービス「タクミノメ」の正式提供を開始いたします。 | 分析力をコアとするデータソリューションカンパニー 株式会社ALBERT

 

いったいいつになったら止まるんでしょうね。これからのALBERTに注目です。

 

ちなみに、私もALBERTはS株で2株だけ保有しています。

(※金が無いので単元未満株でしか買えない笑)

 

 

11月までもうちょっと伸びるんじゃねえかなあと思っているのですが、どうでしょうね。

 

ちなみに、この株価推移の図はRのquantmodパッケージで作成しています。詳しくはここ。

株取引には必須?Rのquantmodパッケージで簡単に株価データを取得する方法 - バナナでもわかる話

 

 

 

上昇株の予想は出来るのか

このブログでは、株式分析についてよく記事を上げていますが

株式投資 カテゴリーの記事一覧 - バナナでもわかる話

 

こういった株価の急上昇を予測することはほぼ出来ません

経済学でも、統計学でも、機械学習でも無理です。

 

故に、このような急上昇株での儲けを狙うには、自らの情報源を使って質的情報を集めて、有望そうな株を事前に抱えて置く必要があります。

 

仮想通貨で一発逆転(短期投資ではなく長期投資)を考える場合も同じです。

ただ、ファンダメンタル分析が行いやすい分、仮想通貨より株の方が客観的な情報のもとでの投資が可能です。

 

以上、統計分析はあくまで、過去に得られた量的情報から、今後の傾向を様々な面から見ているに過ぎないわけですね。

 

分析手法の出来ること、出来ないことをしっかり把握した上で分析を行うことが重要です。

 

投資初心者は高配当利回り株には手を出すな

今日は株式投資に関するコラムを書かせていただきます。

よくこんな話を聞いたりします。

「定期預金は金利が0.2%程度(2018年現在)なのに対して、株式市場の配当利回りは平均で2%、高い所だと5%や7%(2018年現在)。絶対預金をするより株式投資を行って、配当を受け取った方が良い」


ここまでなら良いんです。ただ、それを鵜呑みにした投資初心者が、


「そうか、それなら株を買ってみよう」

「どうせ買うなら配当利回りが高い企業が良いよな~」

とか思ってしまう、これがマズいんですね。説明していきます。





配当利回りの式

配当利回りですが、次のように計算されます。
 (配当利回り)=\frac{(1株当たり配当)}{株価}


株を買ったとすると、当然その分の株価を一旦支払うことになるので、自分が支払った額に対して、どれくらい配当が貰えるのかを表す式であることがわかりますね。




高配当利回り株のリスク

「配当利回り」 「ランキング」なんてキーワードでググってみると、配当利回りランキング系のサイトがいっぱい出て来て、やはり配当利回りの高い企業の情報は需要があることがわかります。


しかし、一歩引いて冷静に考えてみてほしいんです。


「「なんで、この企業は配当利回りがこんなに高いんだ」」



先ほどの式を思い出してみます。

 (配当利回り)=\frac{(1株当たり配当)}{株価}



この式から、配当利回りが高いというのは、二つの状況が考えられますね。


①1株当たり配当が高い
②株価が低い



各状況についてよくよく考えてみましょう。



1株当たり配当が高い

配当って、どこから出てくるんでしたっけ。
前に書いた記事(【初心者向け】サスティナブル成長率とフランチャイズ価値モデル - バナナでもわかる話)から画像を拝借しますが、要は下の画像のようになります。

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企業が稼いだお金(利益剰余金)から、配当が出されて、余ったものが次の企業経営に回されます(内部留保)



まず、一つ目の疑問。この企業、なんでこんなに配当を大盤振る舞いしているのでしょうか


だって、将来のことを考えたら、成長産業や自社の有望事業に投資することを考慮して、内部留保に回すべきじゃないですか?


つまり、高配当利回り株の企業で、配当を大盤振る舞いしている企業には「「投資するよりも配当に金を回す何かしらの理由がある」」わけです。


株価が著しく低い

株価というのは、需要と供給により決定するので、皆が株を欲しがれば、株価は上がっていくはずです。

そこで次に、なんで、利回りが高いのに、投資家からの需要が小さいんだ??

という単純な疑問を持ってほしいわけです。



前の記事でも書きましたが、株価は経営状態を先取りします。
【初心者向け】初心者投資家はPERよりもPBRを見るべき - バナナでもわかる話


利回りが高いのに、株価が低いのは、当然投資家の大多数や、プロ投資家が「この株は将来的にリスクが高い」と考えている可能性が高いわけです。


まとめると....

企業が配当を謎に高くしているのには当然理由があるはずで、それにもかかわらず、株価が上昇しないということは、その背後に何かしらのリスクが潜んでいる可能性が高いわけです。


そして、そのリスクを反映した結果、高配当利回り株と化している可能性があり、


ある程度市場に精通した人間ならまだしも、投資初心者が、

「この高配当利回り株はリスクが小さい」とか「ここの株はリスクが大きいから買わない方が良いな」

とかいう判断なんて出来るわけがないのです。



だから、高配当利回り株から銘柄を運任せで選ぶという行為は、確実に爆弾が入っているクジ引きを運否天賦に任せて引く行為に他ならないわけです。




そういうわけなので、配当利回りを得たいタイプの初心者投資家は、高配当利回り株はむしろ避けるべきで、平均的な2%あたり(2018年現在)の企業から、経営が安定していそうな企業を選ぶべきなのです。

【初心者向け】初心者投資家はPERよりもPBRを見るべき

前回までの記事で、ファンダメンタル分析の一つとして、株式価値の評価方法について確認しました。
bananarian.hatenablog.com


しかし、投資において評価すべき項目は株式価値だけではありません。今回はよく使われる指標であるPERPBRの話をしようと思います。


PER

PERは次の式で求まります。

 (PER)=\frac{株価}{1株あたり当期純利益}

これは、要は株を振り出すことによって得られた資金を、何回分の利益で回収できるかを表します。


このPERの値が小さい方が、株を振り出すことで得られた資金をうまく使えているという意味で、優れた経営を行っていると言うことが出来ますので、PERが小さい場合は一般に買い時と言われています。
※ただし、この論理は(1株あたり当期純利益)>0でないと成り立たないことに注意してください。




PBR

一方PBRは次の式から求まります。

 (PBR)=\frac{株価}{(1株あたり純資産)}


こちらは、株価が純資産に対してどれくらいの割合を占めているかを表していますが、これは次の意味合いから、株式の価値指標となっています。



株主の権利の一つに残余財産分配請求権というのがあることをご存知でしょうか。これは、もし企業が解散したら、企業が持っていた資産を株主が山分け出来るという権利です。
野村證券 | 残余財産分配請求権(証券用語解説集)

つまり、ザックリこのPBRについて説明してしまうと、もし今この瞬間企業が解散したとしたら、自分の取り分はいくらかという指標になるわけです。




ということは、単純に考えて、もし (PBR)<1だとしたら、明らかにこれって株式の過小評価になりますよね。



よって、この過小評価されている時が買い時です。
※当然例外はあります



株式が過小評価されている時に買っておいて、適正水準に戻った時に売るというのがアノマリーを利用した株取引であるというのは前の記事で確認しましたよね。
bananarian.hatenablog.com






PERは実際に使おうとすると使いにくい

というわけでPERとPBRについて説明したわけですが、実際使おうとするとPERってメチャメチャ使いにくいんです。というのも



・当期純利益が大きく動くため、予想値を使うべきか今の値を使うべきか、どの当期純利益を使うべきかが難しい

・当期純利益がマイナスになったらあまり役に立たない

・とにかくこの指標自体の変動が大きい



一応、全株式投資家のバイブル、会社四季報にもPERやPBRについては載っているわけですが

慣れるまではPBRが1未満かどうかで判断する方が無難かなと思います。


※会社四季報っていうのは、下のようなやつで、企業情報についてまとまった雑誌です。






中級者は画一的な指標は使うべきではない

ここまで、初心者であれば (PBR)<1を頼りに、有望な銘柄を探すべきだという話をしてきましたが、これには落とし穴があります。



株価の動きに関する一種の法則として、

「市場参加者の1部は、経営状態を先取りする」

というものがあります。



どういうことかというと、ある企業Aの経営が悪化するという情報をある年の決算日に報告するとします。

普通に情報を仕入れている一般投資家は、決算日の報告とともに経営悪化の情報を得ることになり、そこから

「この株は売っておかないとマズイ」

と売り始めることになりますが、何故か傾向として、決算日前から売りが増えだすことが多いんです。その結果、情報が未発表であるにもかかわらず、株価が少しずつ下がることになります。



これを「市場の先見性」とか呼んだりするわけです。




よく言われる理由として、プロの投資家は目利きが多いため、経営が悪化しているかどうかを事前に察知し早めの行動を行っていて、その結果が株価として反映されているからというお話があります。



正直、インサイダーやら、私的な情報のやり取りやらが横行してる結果でしかないだろうと思ってしまいますが


とにかく、株価は、公的な情報よりも先に動くのです。


そのため、いくら (PBR)<1とはいっても、将来の業績悪化が見込まれて、低いまま放置されている可能性があるわけです。

だから、中級者は (PBR)<1であっても、すぐに飛びつくべきではなく、一旦IR資料等を参考にして立ち止まって考えるべきなのです。





  PBR>1は悪いことなのか

また、 PBR>1の株は買うべきではないかと言われるとそうとも限りません。


要はこれからどんどん成長していく、成長株であれば、現在のPBRが (PBR)>1であっても、どんどん資産を増やしていくケースが多々ありますし、画一的な指標ではなく、様々な指標から総合的に判断すべきであると言うことに注意しておいてください。




次回もまた、ファンダメンタル分析について記事を書いていこうと思います。

【初心者向け】サスティナブル成長率とフランチャイズ価値モデル

前回までで様々な株式価値評価の方法を確認しました。
bananarian.hatenablog.com

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しかし、前回までの問題点は主に次の通りでした。


「「なんか成長率gの決め方雑じゃね???」」


現状の説明では、客観的な指標はなく、分析者が定性的・定量的な指標をもってgを与えてやる、つまり仮定してやる必要がありました。


そこで、企業が提供する財務データを使ってgを与える方法を考えてやろうというのが今回のテーマになります。




財務指標に関して

上場企業は自社の財務データというものを公開しています。


例えばカルビー株式会社であればこんな感じですね。
www.calbee.co.jp

試しに2018年3月期、第1四半期における
有価証券報告書(
http://www.calbee.co.jp/ir/pdf/2017/yukasyokenhokokusyo_20170809.pdf
)を見てみましょう。


これは、要は株主や投資家に対して

今自社の事業はこんな感じですよー

というのを説明している資料になります。


2頁目を見てみると主な経営指標として色々書いてありますね。そこに「純資産額」「純利益」などなど書いてあると思います。
このような企業の公開している財務データを利用して分析しようというわけです。




今回使う財務指標と財務データ

貸借対照表

企業は貸借対照表という表に、自社の全ての資産と、その資産を得るために行った資金運用の内訳を示さなければいけません。

貸借対照表は大まかに言うと下のような構成になっています。
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損益計算書

もう一つ、貸借対照表とは別に、企業は損益計算書というものに、自社の利益構造を示さなければいけません。


この損益計算書と貸借対照表の情報を主に利用します。

純資産

貸借対照表の右側にあるやつですね。これについては表で説明しました。


配当

企業の儲けの構造は次のようになります。


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損益計算書の「当期純利益」が貸借対照表の利益剰余金に組み込まれる→利益剰余金はつまり、企業の儲けであるが、企業の儲けは株主の儲けである→そこで利益剰余金の中から配当として、株主に還元される→残りは内部留保として、次期にまわされる

企業の配当内部留保の構造はこのようになります。

ROE

 (ROE)=\frac{(純利益)}{(期初純資産)}

このような指標をROEと呼びます。
要は元々持っていた純資産に対して、どれくらい利益を上げることが出来たかを表しますね。

内部留保率

 (内部留保率)=\frac{(内部留保額)}{(純利益)}

このような指標を内部留保率と呼びます。
純利益に対して内部留保をどれくらい用意したかという指標になります。



サスティナブル成長率

では、成長率の話に入ります。
期末の純資産を B_1,期初の純資産を B_0と置くことにします。

先ほどの話を考えると、もし増資を行わないとすれば次のような関係が成り立ちますね。

 B_1=B_0+(内部留保額)


さらに内部留保率を bとおくと
 B_1=B_0+b(純利益)


そして (純利益)=B_0(ROE)であることに注意すると
 B_1=B_0+bB_0(ROE)=B_0(1+b(ROE))

であることがわかりますね。

つまり、この式から b(ROE)は純資産の成長率を示すことがわかります。


この成長率 b(ROE)サスティナブル成長率と呼びます。



※増資を行わないとすればという点は忘れないでください。あくまでこの成長率は自力のみの成長率を表すという話になります。



フランチャイズ価値モデル

そして、このサスティナブル成長率を、定率成長モデルの成長率 gに当てはめたモデルを

フランチャイズ価値モデル

と呼びます。


※定率成長モデルについては前回の記事参照
【初心者向け】企業の性質を考慮したモデル - バナナでもわかる話


フランチャイズ価値モデルとサスティナブル成長率の解釈

このように、成長率gを財務データを使って当てはめることで、より客観的に、定量的な考え方をもってモデルを構成することが出来ますね。

ただ、先ほども言ったようにこのモデルを扱う上で注意することは、このモデルは再投資を行わない場合、つまり既存事業の価値に関する実態を表現したモデルであるという点であり、このモデルはあくまで外部からの資金調達を行わなかった場合のモデルであることを忘れないでください。

【初心者向け】より現実に即した株式価値の評価方法

前回の記事では、企業の成長を考慮することで、将来の配当を仮定し、株式価値をモデル化するといったことをやりました。

bananarian.hatenablog.com


しかし、前回の記事では次のような疑問点がありました。


「「成長企業から成熟企業に変わったらどうするんだ」」

「「成熟企業から、また成長企業に転ずる可能性もあるだろう」」

この点を考慮したモデルを今回は考えてみます。


前回の復習

企業の配当に関する成長率として、適当な割合 gを仮定する。

この時将来の配当 Dの予想は次のようになりますね。

 D_2=D_1(1+g)
 D_3=D_2(1+g)=D_1(1+g)^2
....
 D_n=D_1(1+g)^{n-1}


そこでこの予想を配当割引モデルに代入します。
bananarian.hatenablog.com


 D_1(\sum_{i=1}^{\infty}\frac{(1+g)^{i-1}}{(1+k)^i})=\frac{D_1}{1+k}(\sum_{i=1}^{\infty}\frac{(1+g)^{i-1}}{(1+k)^{i-1}})=\frac{D_1}{k-g}

ただし、 k>g

これを定率成長モデルと呼びました。



定率成長モデルに対する疑問

端的に言うなら、 gが固定されているのは問題ないのか???という話です。

まあ g=0.001 g=0.002にかわるくらいは誤差の程度にような気がしますが、

 g=0.12 g=0.002に変わった場合は、結構変化しているように思えます。



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市場の成熟

一旦、株や投資の話を忘れて、市場というものについてのイメージを持ちましょう。

例えば、カルビーのポテトチップスの売り上げを見てみます。
下の図はネットで公表されているカルビーグループの決算説明会における資料の切り取りです。
ここのページ(https://www.calbee.co.jp/ir/pdf/2011/kessansetsumei_20110510.pdf)の3ページ目です。

f:id:bananarian:20180916175609p:plain

水色の部分がポテチの売り上げ高の推移です。

1970年代の真ん中あたりから販売を始め、そこから急激に売り上げを伸ばしていき、1980年代真ん中あたりまで上昇を続けています。

それ以降は80,000百万円あたりで売り上げが停滞しています。



つまり、
1970年代から1980年代までは、ポテトチップスは成長産業で、カルビーがどんどん市場を開拓していくことで、市場が拡大していった。
1990年代頃はポテトチップス産業は成熟産業に転じ、これ以上市場を拡大することが難しくなった。

ということです。
なんとなく想像できますよね。

日本中の人口が極端に大きく変わらないとして、ポテチを食べる人の割合が2018年の今頃急に変化するなんてそうそうありませんよね。


このように、成熟した市場を扱うか、成長中の市場を扱うかでその企業の成長率や配当の成長率も変わってきそうです。



多段階配当割引モデル

そこで、例えば 1期からN_1期を成長期、 (N_1+1)期からを成熟期と仮定してみます。
成長期の間の配当の成長率を g_1,成熟期の配当の成長率を g_2とおいてやることにします。

 g_1>g_2


このもとで配当割引モデルを導いてみます。

 \sum_{i=1}^{N_1}\frac{D_1(1+g_1)^{i-1}}{(1+k)^i}+\sum_{i=N_1+1}^{\infty}\frac{D_1(1+g_1)^{N_1-1}(1+g_2)^{i-N_1-1}}{(1+k)^i}

ちょっと複雑に見えますが、定率成長モデルの導出と同じです。
途中から成長率が変化しただけですね。


これは、二段階の成長パターンを反映したので二段階配当割引モデルと呼ばれます。

当然、もっと段階を増やすこともできます。



多段階配当割引モデルの注意点

段階を増やしすぎたり、現実離れした仮定をおいてやると、現実の株価パターンから著しく乖離する可能性があります。

だから、その辺の仮定は扱う企業に則してうまく置かなければいけません。


もう一つ、これはモデル一般の話になりますが、モデルはあくまで減少に対する近似であって、仮定が妥当かどうかは常に検討しなければいけません。




そういうわけで、モデルに対して仮定をおくということについては細心の注意を払わなければなりません。



こうした仮定を廃するために、将来の配当に対して過去の配当との関係式をおくのではなく、財務データから予測を行ってみるといったモデルも考えられます。

次回はその予測を交えたモデルについて考えてみようと思います。

【初心者向け】企業の性質を考慮したモデル

前回は、株式の評価を行うためのモデルとして、配当割引モデルを紹介しました。
bananarian.hatenablog.com


しかし、配当割引モデルでは、将来の配当なんてわからないという問題点がありました。



そこで今回は、将来の配当に対して一定の仮定をおいた、より現実的なモデルを考えます。


企業の成長を考慮する

一般に、企業の成長幅には標的市場の状態が関係します。

ベンチャー企業などの、これから伸びると思われる業界に参入したスタートアップ企業は、成長産業のもとでどんどん成長できますから、うまく伸びれば株価はどんどん上がりますし、それに合わせて配当も増えていくはずです。


一方、成熟市場であったり寡占状態の市場でシェアを固めた成熟企業は、配当が爆発的に増えるような事態はほぼないはずです。



つまり、企業の成長具合に合わせた配当の予想が行えるはずでは、というわけです。




ゼロ成長モデル

成熟企業であれば、配当の伸びは期待できません。そこで、次のような仮定を施します。

 D^*=D_1=D_2=....=D_n=....
つまり、いつまでたっても配当は D^*のまま、ゼロ成長であると仮定します。


こうすことで、配当割引モデルは次のように変化します。


元々の配当割引モデル
 \sum_{i=1}^{\infty}\frac{D_i}{(1+k)^i}

ゼロ成長モデル
 D^*(\sum_{i=1}^{\infty}\frac{1}{(1+k)^i})= \frac{D^*}{k}

これは、所謂等比数列の和を計算する要領で出てきます。





定率成長モデル

成長企業であればいくらかの割合でどんどん成長していくはずなので、配当は年々上がっていくはずだと考えられます。

そこで適当な割合 gで成長すると考えてみましょう。

この時将来の配当の予想は次のようになりますね。

 D_2=D_1(1+g)
 D_3=D_2(1+g)=D_1(1+g)^2
....
 D_n=D_1(1+g)^{n-1}


そこで先ほどと同じ要領で配当割引モデルに突っ込みます。

 D_1(\sum_{i=1}^{\infty}\frac{(1+g)^{i-1}}{(1+k)^i})=\frac{D_1}{1+k}(\sum_{i=1}^{\infty}\frac{(1+g)^{i-1}}{(1+k)^{i-1}})=\frac{D_1}{k-g}

ただし、 k>g



このgに、適当なg,例えば過去のデータを元に年率1%成長していくとわかれば g=0.01と入れてやればよいわけです。

これを定率成長モデルと呼びます。


まとめ

前回と合わせて二回分の記事で、3つの株式評価モデルを学びました。まとめておきます。


元々の配当割引モデル
 \sum_{i=1}^{\infty}\frac{D_i}{(1+k)^i}


ゼロ成長モデル
 \frac{D^*}{k}


定率成長モデル
 \frac{D_1}{k-g}



でも、まだ疑問が残りますね。

「「成長企業から成熟企業に変わったらどうするんだ」」

「「成熟企業から、また成長企業に転ずる可能性もあるだろう」」


当然この疑問に答えるモデルも存在するので、それについてはまた次回の記事でお話しますね。

【初心者向け】配当割引モデル

前回、結構前の記事になりますが、企業や株式の本源的価値を見極めることが出来れば、儲ける方法に結びつけることが出来るという話をしました。
bananarian.hatenablog.com


今回はとうとう本源的価値の評価方法についてやっていきます。
ただ、今回は必要な道具の準備だと思っておいてください。

現在割引価値

まず、現在割引価値について説明します。

ざっくりいうと、時間の経過を考慮した場合のお金の価値のことを現在割引価値(価格)と呼びます。

考えていただきたいのですが、今この瞬間に貰える100万円と、1年後に貰える100万円は等価でしょうか?



まず、すぐ思いつくのは次のような考え方ですね。

100万円を1年間ゆうちょの定額預金で運用すれば0.01%の利息がつくので、今この瞬間に100万円を貰った場合は、その価値が1年後に101万円になっている。よって、1年後に貰う100万円、今この瞬間に貰える100万円の方が価値が高い。



次のような考え方もあります。

今、現金を持っていないから早急に現金が必要だ。正直、今すぐに必要なため、1年後の100万円より今すぐもらえる50万円の方が価値が高い。



前者は金利を考慮した場合のお金の価値であり、後者は主観的な価値観に基づいたお金の価値です。

この両者はいずれも、「時間の経過により、お金の価値が割り引かれる」という発想をもっていますね。


では、この考え方を使って1年後に貰える100万円の価値と、今すぐもらえる100万円の今の時点での価値を比較してみましょう。

 (今すぐもらえる100万円の今の時点での価値)=100万円
 (1年後に貰える100万円)= \frac{100万円}{1+0.01}=99万100円

下の式は、要は利率分1年後の100万円の価値を割り引いて考えているわけです。


このように、将来に貰えるお金を現在の価値に換算しなおしたものを現在割引価格(現在割引価値)と呼びます。

この例は金利ですが、主観的割引率を設定すれば、主観的な価値観もモデル化出来ます。



企業に対する仮定

主に会計学問に関する領域での仮定ですが、企業は継続企業の仮定というものがおかれています。

要は、企業は基本的に、倒産することなく、永続的に企業運営を行い続けるという仮定です。


これは現実に反する仮定であるかもしれませんが、正直この仮定をおいても、おかしなモデルにはならないので、よくこの仮定が使われます。

ただ、モデルを使用する際には、このようなある種非現実的な仮定をおいたという事を頭の片隅に置いておくべきではあります。



配当割引モデル

企業が存続している間、ずーーーーーーーっと株式を持ち続けたとすると、毎期毎期ずーーーーーーーーーーっと配当がもらえますよね。

そして、この無限期間まで続いてもらえる配当の合計って、要はこの企業の株式の価値じゃないですか?

この考え方をモデル化したものが配当割引モデルです。

ただし、先ほど説明したように、1年後の配当と90年後の配当、10000年後の配当は等価ではありません。よって割り引いて、現在の価値に揃えてから計算する必要があります。


 i期に貰える配当を D_iとおくことにします。ここで割引率を kとおいてやると、ずーーーーーーーーっともらえる配当の和に関する現在割引価値は次のようになりますね。


 \sum_{i=1}^{\infty}\frac{D_i}{(1+k)^i}

これが配当割引モデルです。


いやいやいや、ずーーーーーっと先の配当がわかるわけないじゃないかって声が聞こえてきそうですし、割引率もずっと一定でいいのか?なんて声も聞こえてきそうです。

この配当割引モデルはあくまでキホンのキです。ここから少しずつ仮定を緩めていきますのでご安心ください。




配当割引モデルの理論

わかりやすいかなあと思ったので、現在割引価値の観点からこのモデルを説明しましたが、
本来であれば、先ほどの割引率 kを、期待投資収益率と考え、現在の株価から逐次的にこのモデルを導くことが出来ます。


投資家の、1期先の予想株価を P_1、現在の株価を P_0とします。この時予想される期待投資リターンは次のようになりますね。

 k =\frac{D_1+P_1-P_0}{P_0}


リターンについての話を忘れた人はこちら
bananarian.hatenablog.com




これを少し変形してやると次のようになるのは分かりますか?

 P_0=\frac{D_1}{1+k}+\frac{P_1}{1+k}…①


これと同じ操作を P_2,P_1,D_2でもやってみると

 P_1=\frac{D_2}{1+k}+\frac{P_2}{1+k}...②


①、②を合体させてやれば次のようになりますね。

 P_0=\frac{D_1}{1+k}+\frac{D_2}{(1+k)^2}+\frac{P_2}{(1+k)^2}


これを∞まで繰り返してやれば、 P_{\infty} (1+k)でいっぱい割られるためほとんどゼロになります。


故に、先ほどの式が出てきます。

 \sum_{i=1}^{\infty}\frac{D_i}{(1+k)^i}



そのため、配当割引モデルとは、投資家の期待リターンを無限期まで考えたモデルであると言うことが出来ますね。


次回はこのモデルをより実践的な形へと仮定を緩めていきます。