前回はポートフォリオのリターンと、各資産のリターンの間にどのような関係があるかを説明しました。
そして、前回ちょっと数式が多すぎて見てて嫌になった方も多いと思うので、
今回は雰囲気とイメージで、今までの記事を読んでいなくとも理解できるよう説明するよう心掛けてみます。
↓数式が多いと噂の前回の記事
bananarian.hatenablog.com
前回の復習
一般にリターンは次のような形で表現出来るわけですが、
資産a、資産bの2資産に投資を行う際のポートフォリオのリターンは次のように表すことができるというところまでやりました。
ここでとは投資比率です。
期待値と分散
期待値とか分散とか知らん知らんって人のために簡単にイメージだけ導入しておきます。
まず、期待値や分散を考えなければいけない場面は確率的に何かが決まる場面です。
サイコロを投げたらどの面が出る?とか、明日の株価は上がるか下がるかとかそういった不確実な事象に対して、人間は基本的には無力です。運否天賦に任せるほかありません。しかしそれでは心もとないわけなので、その出来事が数えきれないくらい起こった場合どれくらいの割合で出てくるのかといったことを考えます。それが確率です。
そして、その確率の性質として、全体を均したらこれくらいの値になるというような値として期待値、どれくらいバラついているかを示す値として分散を考えます。
逆転の発想で期待値や分散が確率を決めていると考えることもあります。
いやいや、「実際の出来事は1回しか起こらないし、何度かあったとしても高々数回でしょ?」と文句が出てくるかもしれません。
その通りです現実世界で確率なんぞわかりません。当然期待値や分散も分かりません。しかし理論においては期待値や分散を使います。何故かと言うと人間が運否天賦に立ち向かうための道具がこの確率論しかないからです(ちょっと言い過ぎ?笑)。
そういうわけなので私たちは運否天賦に対して確率論で分析を行い、分からない値(期待値や分散などなど)は統計学を使って限りなく信ぴょう性の高い値を代わりに突っ込んでカバーするわけです。
ポートフォリオの期待値と分散
それでは導入したところで確率を扱っていきます。
そして確率的に変化するような値、つまり不確実な物事を以降確率変数と呼んでいきます。
資産a、資産bの2資産に投資を行う際のポートフォリオのリターンについて考えるわけですが、資産aに投資したらどれくらいのリターンが入るかなんて、事前には分かりませんよね。つまり不確実な事象です。これは確率変数です!資産bのリターンも同様です。
そういうわけで、資産aのリターンと資産bのリターンは確率変数であると考えます。
投資比率はどうでしょう。投資比率とは元手を資産aに何%振り分けたか、資産bに何%振り分けたかというものでした。これは振り分ける本人が勝手に決める値なので、全く不確実ではありません。よってこれは確率変数ではなく定数として考えます。
最後にポートフォリオのリターンはどうでしょう。これはもうわかるかとは思いますが、確率変数です。というか不確実な事象を2つ足している値なわけですから、これが急に確実なものになるわけがないというわけです。
期待値を取るという記号をE,分散を取るという記号をVarで表すことにします。そうするとポートフォリオの期待値と分散は次のように表せます。
知らん記号が出てきたので説明しておくと、cov[]とは共分散です。共分散とは何かというと二つの確率変数について、この二つの確率変数のバラツキ具合がお互いの影響を受けあっているかどうかを表す指標です。
つまり、全く関係なくバラついている場合は共分散は0になります。
例えば手元にあるサイコロがどの目を出すかという確率変数と、地球の裏側にいるブラジルの人が道ですっ転ぶ確率に関する確率変数の共分散は0になります。
ポートフォリオのリスク
ポートフォリオのリスクに関する概念はたくさんあるのですが、その中の1つを紹介します。
分散に平方根を取ったものを標準偏差なんて呼んだりしますが、これがポートフォリオのリスク概念の1つです。
つまりポートフォリオのリスクは、
となります。これをポートフォリオのトータルリスクと呼びます。
この標準偏差をリスクと呼んでいる理由は単純で、要はバラツキ具合を表しているわけなので、数値が色々な値を取るということは上がり下がりも大きいわけで、それをリスクが大きいと呼んでいるのです。
リスク分散効果
最後に今までの話を使って投資のリスク分散について数式で表現してみます。ここに関しては数式を用いるので、わからない人は雰囲気でいってください。
について、これを資産a、資産bに関する投資のトータルリスク、ポートフォリオのトータルリスクを用いて表すと次のようになる。
ここでであり、資産a,資産bのリターンに関する相関係数である。
更に平方完成を施すと次のようになる。
ここで、が非負であることを仮定すると(これはロングポジションである限りは成り立つ。)
は定義から非負であるので、
が成り立つ。最後に両辺の平方根を取ると
つまり、相関係数が1でない限りは必ず分散投資のトータルリスクは個々の資産のトータルリスクの加重平均を下回るということになりますね。
特に相関係数が-1の場合はトータルリスクを完全に打ち消すことも可能になります。
これが分散投資の効果です。