バナナでもわかる話

開設当初は計量経済学・統計学が専門の大学院生でした。今はデータを扱うお仕事をしています。統計学・経済学・投資理論・マーケティング等々に関する勉強・解説ブログ。ときどき趣味も。極力数式は使わずイメージで説明出来るよう心掛けていますが、時々暴走します。

【初心者向け】市場アノマリーの一過性について

前回は、ざっくり言うと市場アノマリーさえ見つければ儲かるんじゃね?っていう話をしました。
bananarian.hatenablog.com


今回は小型株効果を例に、市場アノマリーはバレたら皆が群がるから効果がすぐなくなるという話をします。


小型株効果

市場アノマリーの有名な例に小型株効果があります。これは、小型株の平均リターンが理論値よりも大きくなる一方で、大型株の平均リターンが理論値よりも小さくなるという現象です。

小型株とは要は時価総額が小さい企業だと思ってください。

この小型株効果はRolf Banz[1981]によって発表されました。

ここで興味深いのはその後の追実験では、1982年以降、つまり小型株効果が存在するとアナウンスされてから、小型株効果の消失が確認されたということです。


つまり、何が言いたいかというと、市場アノマリーは見つかってしまったが最後、皆がアノマリーからウマイ汁を吸おうと群がるために、市場アノマリーが消失するということです。

日本でも同様の現象が見られましたが、その後一旦消失しているそうです。


過去の市場アノマリーを調べることは意味がないのか

じゃあ、過去の市場アノマリーを調査しても意味がないじゃないか。そんな文句が飛んできそうですが、そんなことはありません。

アナウンスメントによって皆がアノマリーを打ち消す動きをするわけですが、それはアノマリーに関する知識を備えた人のみの動きなわけで、数年、十数年も経てばそんなアナウンスメントなんか知らない投資家が市場参入してくるわけです。

そうすると再び市場アノマリーが発生します。

実際、一度は効果が減退した小型株効果ですが、日本において再び確認出来たという研究ノートも上がっていました。
https://www.smtb.jp/business/pension/information/center/operation/pdf/07_04_35_12.pdf


そういうわけで、市場アノマリーは次のように活用すべきであると私は考えます。

・まず、事前に過去の市場アノマリーについて知っておく
・次に、直近のデータを使って市場で市場アノマリーが発生しているかどうかを調査する
・発生していれば参入時だし、発生していなければ参入すべきではない

マーケットポートフォリオの調べ方

ところで、小型株効果は、マーケットポートフォリオのリターンと比べて異常にリターンが高いとか低いとかで判断するわけですが(本当はJensenのαで調べるわけですが簡易的に)、マーケットポートフォリオはどうやって調べればいいんだとなりますよね。


結論から言うと、マーケットポートフォリオを調べるのは無理です。あらゆる資産を全部考慮に入れなければいけないので不可能なんですね。そこで普通は代理変数を利用します。

例えば国内の株価だと、TOPIXですね。
stocks.finance.yahoo.co.jp

TOPIXの過去の平均リターンと比較することで簡易的に小型株効果が発生しているかどうか調べたり、もう少ししっかりやりたい人は、

マーケットポートフォリオの超過リターンを各小型株の超過リターンの分位点に回帰してやることでJensenのαのt値を確認するという方法を取ります。
※超過リターンとは、リターンとリスクフリーレートの差から得られます。

分位点で回帰する理由は、小型株のリターンの標準偏差は一般的に大きいため、単なる平均だと信用ならないためです。


※個人的には、別に推定分散で標準化してやればいいんじゃない?というような気もするんですが、そこのところどうなんでしょう。よくわからないです。まあそれをしないのはサンプルサイズの関係でしょうか。