今回は十分統計量に関する問題をまとめていきます。少し量が多いので、2回に分けます。
目次
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十分統計量とは
標本とその分布のパラメータを考えます。この時、次の等式が成り立つ統計量を十分統計量と呼びます。
これは、どう解釈すれば良いかというと、
「パラメータの情報をは十分に持っている」
と解釈出来ます。
等式を見ていただけるとわかるようにがあろうと無かろうと、の分布には変化がありません。
フィッシャーネイマンの分解定理
フィッシャーネイマンの分解定理
がの十分統計量であるとき、確率密度関数(確率質量関数)は次のように分解できる。
これをフィッシャーネイマンの分解定理(factorization theorem)と呼びます。
この定理の証明は間違いなく出題されませんので、省略します。
というのも、この分解定理の証明には測度論を利用します。これは、1級範囲を逸脱していますし、実際公式教科書でも、しれっと証明を省略しています。
この定理を利用して、あるが十分統計量であることを証明します。
ベルヌーイ分布
ベルヌーイ分布の確率質量関数は次のようでした。
のサンプルを独立同一に得たとすると、同時分布は
ですが、この時、がパラメータの十分統計量であることを示します。
この時と見ると、フィッシャーネイマンの分解定理から、はパラメータの十分統計量です。
ポアソン分布
ポアソン分布の確率質量関数は次のようでした。
のサンプルを独立同一に得たとすると、同時分布は
ですが、この時、がパラメータの十分統計量であることを示します。
と見ると、フィッシャーネイマンの分解定理からはパラメータの十分統計量です。
正規分布
正規分布の確率密度関数は次のようでした。
のサンプルを独立同一に得たとすると、同時分布は
この時、がパラメータの十分統計量、がパラメータの十分統計量であることを示します。
まず、
このように見ると、であり、
のため、フィッシャーネイマンの分解定理から、はに関する十分統計量です。
また、
であるので、
と見ると、はパラメータベクトルの十分統計量ベクトルである。
分解定理を使わない例
当然、十分統計量かどうかは分解定理を使わずとも、定義から示すことも可能です。
ただ、計算がしんどいので、普通は分解定理で示します。
ベルヌーイ分布で考える場合、結構計算が簡単なのでこれで確認してみます。
ベルヌーイ分布の確率質量関数は次のようでした。
のサンプルを独立同一に得たとすると、同時分布は
ですが、この時、がパラメータの十分統計量であることを示します。
ここで
以上より
確かに示せました。