バナナでもわかる話

計量経済学・統計学が専門の大学院生です。統計学・経済学・投資理論・マーケティング等々に関する勉強・解説ブログ。ときどき趣味も。極力数式は使わずイメージで説明出来るよう心掛けていますが、時々暴走します。

ルベーグ積分入門 テレンス・タオ 演習1.1.18の解答

ルベーグ積分の勉強のために、タオの『ルベーグ積分入門』を読み始めました。

タオの教科書は、内容が非常に明快である一方、重要な部分がほとんど演習問題に任されていて、しかもその演習問題がそこそこ難しいということで*1、自分なりに演習問題を解いてみようと思います。数学科ではないので、証明等は自己流ですので、何か穴、指摘等あればお願いしますm(__)m

目次

演習1.1.18までの概要

ルベーグ測度の話をする前に、古典的な測度をザックリ導入しておこうという話でした。
そこで、前回の記事でも確認したように、基本測度という矩形を並べる形での測度の概念があり、
ルベーグ積分入門 テレンス・タオ 演習1.1.1 (ブール閉包) の解答 - バナナでもわかる話

そこから、ジョルダン測度の導入も行っています。

ジョルダン測度の、この本における定義は次のようでした。

 E \subset \mathbb{R}^dを有界な集合とする。この時 Eのジョルダン内測度 m_{*,(J)}(E)とジョルダン外測度 m^{*,(J)}(E)を次のように定義する。

 m_{*,(J)}(E):=sup_{\{A\subset Eとなる基本集合A\}}\ \ \ \ \,m(A)
 m^{*,(J)}(E):=inf_{\{E\subset Bとなる基本集合A\}}\ \ \ \ \,m(B)

ただし、ここで、 m()は基本集合から定義した基本測度のこと。

この時
 m_{*,(J)}(E)=m^{*,(J)}(E)ならば Eはジョルダン可測であると呼び、 m(E):=m_{*,(J)}(E)=m^{*,(J)}(E)をジョルダン測度と呼ぶ。

ジョルダン可測な集合は、かなりたくさんあり、ジョルダン測度を考えること自体は価値あることだが、ジョルダン可測ではない集合も存在するので、それを確認した上でルベーグ測度を考えることの重要性を考えておきたいとのことでした。

演習1.1.18

 E \subset  \mathbb{R}^dを有界な集合とする。

この時、有理数点を抜いた正方形 [0,1]^2 \backslash \mathbb{Q}^2とその有理数点の集合 [0,1]^2 \cap \mathbb{Q}^2は共に、ジョルダン内測度が0でジョルダン外測度が1であることを示せ。

内測度と外測度が一致しないので、この2つは有界集合であるにもかかわらずジョルダン可測ではないということです。
これを示していきます。


有理数点を除いた正方形

まず、有理数点を除いた正方形 [0,1]^2 \backslash \mathbb{Q}^2を考えていこうと思います。

まず、 [0,1]^2 \backslash \mathbb{Q}^2内の任意の点は無理数点です。しかし \mathbb{Q}^2 \mathbb{R}^2について稠密のため、近傍には有理点が存在します。よって、内測度を考えると、内側から包まれる基本集合は各無理点でしかなくジョルダン内測度は0。

一方外測度を考える場合は、外側から包める基本集合は [0,1]^2になります。何故なら、任意の有理点の近傍に無理点が存在するため、 [0,1]^2を少しでも小さくすると、包み切れていない無理点が存在してしまいます。よって、ジョルダン外測度は1です。

有理数点

次に有理数点について考えます。 [0,1]^2 \cap \mathbb{Q}^2内の任意の点は有理数点です。しかし、これらの点の近傍には無理点が存在します。よって、内測度を考えると、内側から包まれる基本集合は、各有理点自体でしかありません。よってジョルダン内測度は0。

一方で、外側から包める基本集合は [0,1]^2になります。何故なら、この集合の境界には有理点が存在しています。よって、これを小さくしてしまうと、包み切れていない有理点が存在してしまいます。よってジョルダン外測度は1です。



以上の結果から、ジョルダン測度の範疇ではこのような大量の穴が開いた図形や、その穴自体を計量することは難しいということになります。

そこで、ルベーグ測度を考えていきましょうという話になるわけです。