バナナでもわかる話

開設当初は計量経済学・統計学が専門の大学院生でした。今はデータを扱うお仕事をしています。統計学・経済学・投資理論・マーケティング等々に関する勉強・解説ブログ。ときどき趣味も。極力数式は使わずイメージで説明出来るよう心掛けていますが、時々暴走します。

【初心者向け】企業の性質を考慮したモデル

前回は、株式の評価を行うためのモデルとして、配当割引モデルを紹介しました。
bananarian.hatenablog.com


しかし、配当割引モデルでは、将来の配当なんてわからないという問題点がありました。



そこで今回は、将来の配当に対して一定の仮定をおいた、より現実的なモデルを考えます。


企業の成長を考慮する

一般に、企業の成長幅には標的市場の状態が関係します。

ベンチャー企業などの、これから伸びると思われる業界に参入したスタートアップ企業は、成長産業のもとでどんどん成長できますから、うまく伸びれば株価はどんどん上がりますし、それに合わせて配当も増えていくはずです。


一方、成熟市場であったり寡占状態の市場でシェアを固めた成熟企業は、配当が爆発的に増えるような事態はほぼないはずです。



つまり、企業の成長具合に合わせた配当の予想が行えるはずでは、というわけです。




ゼロ成長モデル

成熟企業であれば、配当の伸びは期待できません。そこで、次のような仮定を施します。

 D^*=D_1=D_2=....=D_n=....
つまり、いつまでたっても配当は D^*のまま、ゼロ成長であると仮定します。


こうすことで、配当割引モデルは次のように変化します。


元々の配当割引モデル
 \sum_{i=1}^{\infty}\frac{D_i}{(1+k)^i}

ゼロ成長モデル
 D^*(\sum_{i=1}^{\infty}\frac{1}{(1+k)^i})= \frac{D^*}{k}

これは、所謂等比数列の和を計算する要領で出てきます。





定率成長モデル

成長企業であればいくらかの割合でどんどん成長していくはずなので、配当は年々上がっていくはずだと考えられます。

そこで適当な割合 gで成長すると考えてみましょう。

この時将来の配当の予想は次のようになりますね。

 D_2=D_1(1+g)
 D_3=D_2(1+g)=D_1(1+g)^2
....
 D_n=D_1(1+g)^{n-1}


そこで先ほどと同じ要領で配当割引モデルに突っ込みます。

 D_1(\sum_{i=1}^{\infty}\frac{(1+g)^{i-1}}{(1+k)^i})=\frac{D_1}{1+k}(\sum_{i=1}^{\infty}\frac{(1+g)^{i-1}}{(1+k)^{i-1}})=\frac{D_1}{k-g}

ただし、 k>g



このgに、適当なg,例えば過去のデータを元に年率1%成長していくとわかれば g=0.01と入れてやればよいわけです。

これを定率成長モデルと呼びます。


まとめ

前回と合わせて二回分の記事で、3つの株式評価モデルを学びました。まとめておきます。


元々の配当割引モデル
 \sum_{i=1}^{\infty}\frac{D_i}{(1+k)^i}


ゼロ成長モデル
 \frac{D^*}{k}


定率成長モデル
 \frac{D_1}{k-g}



でも、まだ疑問が残りますね。

「「成長企業から成熟企業に変わったらどうするんだ」」

「「成熟企業から、また成長企業に転ずる可能性もあるだろう」」


当然この疑問に答えるモデルも存在するので、それについてはまた次回の記事でお話しますね。