まず、最初に申し上げておきたいのは、私はジャーナリストでもなければ、ジャーナリズムを研究しているわけでもなければ、知識人でもありません。一市民目線から見ていて気になったので記事にしてみただけなので、明らかに考慮不足の感が否めませんが、その辺は個人の感想と言うことで。
私、久しくテレビを見ていなかったので、その辺の話を十分に把握しているわけではないのですが、どうやら安田純平さんというジャーナリストの方が危険地域にて取材を行っていたところ拘束され(なんかそんなニュースが昔あったような...というおぼろげな記憶はあります)、今回とうとう開放されたと。
で、危険地域ということで日本政府からは退去指示(?)のようなものが出ている地域だったため、そんなところで取材をしていた本人が悪いとのことで自己責任だと、また、拘束された時点でジャーナリスト失格だとか、拘束されるような準備で取材に臨んだ辺りも自己責任であるだとかそういう、中々厳しい意見も耳にしました。
ざっくりそんな風に理解しています。
「自己責任である」ことは、まあ本人も会見にて認めている通りで(まあ、そう認めざるを得ない状況でもあるわけですが)、僕もまあ自己責任か自己責任じゃないかで言えば自己責任だよなとは思うわけです。
思うわけですが、ここからが本題で
自己責任なのは良いとして、一市民、一国民が「安田純平の一連の騒動は自己責任の範疇だ」と叩く必要はどこにあるのかと思うわけです。
個人的には、あまりに冷たい考え方じゃあないかとも思ってしまって
別にこれが「危険地域って楽しそうだから見に行ってみようぜ~」とかいうノリで現地に赴いた結果捕まったyoutuberだったなら、
「そんなもん自己責任だろう、日本国民はお前のことなんか知らんぞ」
と言うのも、まあ気持ちとしてはわかるわけですが、深刻な状況を伝えねばならないと信念や使命を持って、当然リスク承知で危険地域に赴き、しかも自分の責任も自覚しているそんな人が拘束されましたとなれば、確かに自己責任ではあるが、協力できることは協力したいと思うくらいの心の広さはあってもよいのでは....と思ってしまうわけです。
まだこの「自己責任」が、ジャーナリストの方々の中で語られて、以後の教訓や反省の意味で用いられるのならばわかるのですが、
反省や教訓の意味も無く、「え?安田さんに同情の余地ある?」というような文脈で語られるのはちょっと心が狭すぎやしないか、そんなに日本国民はコストを気にして生きているのかと思うとちょっと悲しくなってしまいました。
この件に関して、面白いツイートが何件かあって、まずこれ
安田純平さんの件で日本のメディアが避けている論点をBBCレポーターの方が言及して下さっている。
— TAMAGO (@tamago3884) November 2, 2018
危険地域の取材をフリージャーナリストに頼っている日本のメディアが「自己責任は是か非か」の二元論ばかり盛り上げるのは保身の為。
権力が権力を守る為に権力を行使する愚。#nhk #ニュース7 pic.twitter.com/w0xvN7d9kg
権力構造がどうのという話はさておいて、画像の方は興味深いなと思いました。
経済学的なものの考え方に、人間の行動は制度やシステムが影響を与えていて、不正や犯罪によって公的に不利益が生じるのは個人の問題ではなく、現行の制度や刑罰制度が問題だというものがあります。
公的に悪い影響が生じるリスクを回避するのは個人ではなく、社会制度の責任であるということです。
個人は各人の目的に合わせて最適な行動を取るにすぎず、それを止めることはできない。だから「個人で気を付けてねー」ではなくて、公的に不利益が発生するような状況が起きないよう、そうしたリスクの伴う行動を「個人視点で見ても最適ではない状況に誘導する」必要がある。
これに限らずよくありますよね。「各人の意識を強く持って気を付けてください(我々は特に何もしません)」という上からのお達し。アレは経済学的にはほぼ無意味です。だって「お達しを受けた」以外何も状況が変わらないわけですから、各人のインセンティブはほぼ変化しません。
このツイートの例のようにBBCは、そもそもフリージャーナリストが危険地域で取材した記事は取り上げないというルールを設けることで、フリージャーナリストが危険地域に行く目的を喪失させ、彼らの最適行動を変えているわけです。
あと、こんな議論は海外ではなされないという批判について次のようなツイートも見かけたので掲載しておきます。
海外でも自己責任論は語られているという指摘。救出時に英国兵士や通訳らが死亡したジャーナリストの例に「戦場ジャーナリストの自己責任を問うべきではないなどというのは、洋の内外を問わず常識とは言えない」。八田真行さん。/戦場ジャーナリストと自己責任 https://t.co/SGIFcYlkqP
— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) October 31, 2018
なんか話題があっちこっち言ってますが、言いたかったこととしては次の通り
・遊びで行ったわけじゃあないのだから、多少不備や不足があったとしても、そんな冷たいことは言わず出来ることはしてあげれば良いじゃあないか
・個人を叩くのではなく、制度やシステム方面にも目を向けるべきではないのか
そして何より、本人も大変だったはずなのに、帰ってきたら帰ってきたでボコボコ叩くのはあまりに酷で、とりあえず休ませてあげようよという気持ちになってしまうのですが、これっておかしいですかね.....??
当然私の知らない色々な事情があるのでしょうけど、ネット上の個人の感想にしては、酷すぎるというか荒い暴言が多々あって、とても辛い気持ちになりました。皆さんはどうでしょうか....?