バナナでもわかる話

開設当初は計量経済学・統計学が専門の大学院生でした。今はデータを扱うお仕事をしています。統計学・経済学・投資理論・マーケティング等々に関する勉強・解説ブログ。ときどき趣味も。極力数式は使わずイメージで説明出来るよう心掛けていますが、時々暴走します。

サービスの4つの特性と統計モデリングでの注意点

今日は、有名なサービスの4特性を通じて、サービスに関するデータ解析で注意すべき点を記事にしようと思います。

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サービス

まず、サービスとはという話ですが、例えばコンビニや銀行、ファミレス等での接客や企業に対するコンサルタント、美容院のカットなどを指します。

※経済経営学部に入るとまず初めに「サービス」と「製品」という商品の区別を教わりますが、製品とは私たちがすぐ想像するところの商品のことだと思ってもらって問題ないかと思います。例えばテレビやスマホ、冷蔵庫などといった形があるような商品のことですね。

サービスの性質

無形性

まず、サービスと製品の大きな違いに「無形性」があります。
その名の通りサービスは製品と違って物質的な性質が無い、簡単に言ってしまえばサービスには形がないということを指しています。

「そんなのあたりまえじゃないか!」と思うわけですが、これは意外と重要な性質で、

まず、形が無いので顧客が事前にその内容や質をチェックすることが出来なく(難しく)なります

例えばこれが製品であれば、掃除機を買いたいから実際の店舗で吸引力を比較するだとか、マッサージチェアの購入検討のために電気屋さんで30分ほど試しに使ってみるなんてことが出来るわけですし、ニ〇リでお皿を購入したいとなれば、実店舗で手にとってその質感や色み等々を確認することが出来ます。

一方これが例えばある企業がコンサルタント会社さんに新しい事業に関する戦略を立ててもらうことになったとして、そのコンサルタントの質は実際にそのサービスを購入し、消費しない限りわかりません。何故なら形がなく、事前のチェックが不可能だからです。

他にも例えば、福岡県に旅行に行こう!となってホテルを予約するとします。このホテルが実際どのようなサービスを提供してくれて、どの程度の質かは実際に泊まってみないとわかりませんよね。


この意味で、サービスと製品は明確に性質が異なるわけです。
故に、一般に顧客にとっては「製品を購入することよりも、サービスを購入することの方がリスキー」に感じるわけです。
これを、顧客の知覚リスクと呼びます。

そのためサービスを提供する企業は顧客の知覚リスクの低減を目的に、例えばホテル会社であれば自社のホテルの内装やサービス内容などをホームページ上に公開したり、権威ある賞や資格を保有していることを示したりするわけです。学習塾などであれば体験入塾制度なんてのもありますよね。

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同時性

次にサービスの同時性という性質について説明します。
同時性とは、生産と消費がほとんど同時に発生するという性質を指します。

製品でこれはまず起こりませんよね。工場で作られた冷蔵庫が作られた瞬間使用され始めるなんてことはないはずです。

一方、ファミレスの接客なんかを考えると、店員は実際にお客さんと関わることで初めて接客を行います。つまり生産を行うわけです。そしてそれと同時にお客さんは店員の接客を受けることで消費していますよね。

このような性質をサービスの同時性と呼んだりします。

異質性

製品は、工場で規格を管理しておけば、たまに不良品は出るかもしれませんが、ほとんど同じ質の商品が出来上がります。

一方でサービスはかなり対応するサービス提供者ありきのものになります。これをサービスの異質性と呼びます。
これを管理するのは中々難しいわけですが、極力同じになるよう事前研修を徹底したりするわけですね。

消滅性

普通製品は、在庫管理を行います。ちょっと多めに作っておいて注文が入る度に出荷するなんてことをよくやるわけですが、
サービスに関してはそんなことは出来ません。

生産と同時に消滅するのがサービスです。これを消滅性と呼んだりします。
これがサービス提供の難しい所で、サービスは生産(コストとして発生)されていても、消費が伴わない場合があり得ます。
具体的に言うと、客の入らない美容院だと、美容師の給料は時給単位で発生しているのに、お客はこないからコストだけが増えるとかそういう話です。

統計解析における注意点

無形性

顧客はサービスを購入する際、リスクを極力減らすために数々の情報を利用して、購買行動を決定します。
例えば初めて入る飲食店の口コミを事前に調べておくだとか、価格帯からそのサービスの質を推定するといった行動です。

そして、そうした情報を元に購買を決定するわけですが、この際顧客の購買行動をモデリングするにあたっては次のような問題点があります。

1. 使用経験とマーケティング変数
まず、初回の購買において、口コミ等の情報を集めたりするのはそうですが、例えばラーメン屋A、ラーメン屋Bのどちらを選ぶかといった場合に、ラーメン屋Aはネットの情報しか得られないが、ラーメン屋Bは一度実際に行ったことがあり、「おいしいかった」という経験的な事実があるとします。この場合、「今日は確実においしいラーメンを食べたい」と思えば、ネット上の情報は頼りにせず(というか、見ることもせず)、一度入ったことのあるラーメン屋Bに入るはずですし、今回は「比較のためにラーメン屋Aに入ってみるか」と思うかもしれません。

つまり、マーケティング変数は、顧客の初期購買の行動分析においては信用たり得ますが、それ以降の購買は使用経験が影響を及ぼしている可能性が高く、マーケティング変数だけでは説明出来ない結果になりやすいということになるわけです。


2. リスクの顧客依存
また、どの程度サービスの不透明さに対してリスクを感じるかは当然顧客に依存します。
全くリスクに感じない人であれば、何も調べず、何の情報もなくサービスを購買することもあるかもしれません。

「髪さえ切ってもらえればどこでもいいや」

なんて考えて適当に美容院を選んでいる男の人とかはそんな感じかもしれません。
こんな感じの顧客であれば、価格帯だけを見てあとは自分の家に近いかどうかでサービスを選ぶなんてこともしているかもしれませんよね。

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同時性

1. 顧客と提供者の相互関係
サービスは、サービス提供者と顧客が同じ場所に居合わせるという少々特殊な商品です。
そのため、当然サービス提供者と顧客の相互作用も発生していると考えられます。
その相互作用の結果が事後的なサービス品質の評価に影響し、リピート購買に繋がるかが変わって来ている可能性も否めません。

異質性

1. サービス提供者の質
サービスの異質性を考えれば、当然サービス品質はそのサービス提供者による影響が大きいと言わざるを得ません。
そのため、単純なモデリングで異質性を排してしまうと実態にそぐわない結果を導く恐れがあります。


このように、サービスは普通の製品とは大きく異なり、実際にサービス関連のモデリングをするにあたっても複雑なモデルを作ってやる必要が生じます(当然、得られているデータのサンプルサイズとの兼ね合いも考えた上で、妥協するところは妥協する。)