バナナでもわかる話

開設当初は計量経済学・統計学が専門の大学院生でした。今はデータを扱うお仕事をしています。統計学・経済学・投資理論・マーケティング等々に関する勉強・解説ブログ。ときどき趣味も。極力数式は使わずイメージで説明出来るよう心掛けていますが、時々暴走します。

【初心者向け】ポートフォリオのリターンって何?

前回、株式投資を例にリターンとは何かということについて説明しました。
bananarian.hatenablog.com


今回は投資の組み合わせ(ポートフォリオ)のリターンについて詳しく説明します。


ポートフォリオって何?

投資理論で言うところのポートフォリオとは、投資の組み合わせです。
例えばA社の株に元手の30%を投資して、B社の株に元手の40%を投資して、C社の株に元手の30%を投資するというような、投資の組み合わせや投資の計画、そんなものをポートフォリオと呼んでいます。


リターンのおさらい

詳しくは前の記事(【初心者向け】投資のリターンとは? - バナナでもわかる話)を見てほしいのですが、要は次のようなものをリターンと呼んでいました。


t時点でA社の株を購入し、その価値が
X_tだったとします。t+1時点で
X_{t+1}の価値になり、この時点で売却しました。簡単に考えるためにこの株には配当がないものとします。この時のリターン
R_xは次のようになります。

R_x=\frac{X_{t+1}-X_t}{X_t}=\frac{X_{t+1}}{X_t}-1

ポートフォリオのリターンの数式表現

それでは、ポートフォリオを数式で表現するとどうなるか考えていきましょう。
今、手元に資産が
X_{p,0}だけあるとします。何で添え字にpをつけたかというと、ポートフォリオの元手であることをわかりやすくするためです。
1期間の間、適当にポートフォリオを組んで運用したら資産が
X_{p,1}になっていました。この時のリターン
R_pは、今までと同じように考えてやると次のようになります。


R_p=\frac{X_{p,1}-X_{p,0}}{X_{p,0}}=\frac{X_{p,1}}{X_{p,0}}-1


2資産ポートフォリオのリターン

それではもう少しポートフォリオの中身を具体的に書いてみましょう。
株式a,株式bの2種類の株式に投資を行ったとします。株式aに対する投資額は
X_{a,0}、株式bに対する投資額は
X_{b,0}としておきます。
そうすると、手元の資産を全てをこの2種類の株式に投資していたとすると、次のようになりますよね。


X_{p,0}=X_{a,0}+X_{b,0}

これは手元にあった資産
X_{p,0}を株式a、株式bに振り分けたことを表しています。

更に、1期間経った後での、この投資していた株式a、株式bの価値を
X_{a,1},X_{b,1}と表すと、先ほどと同じように考えると次の式も成り立つことがわかります。


X_{p,1}=X_{a,1}+X_{b,1}


これで準備は終わりです。改めてポートフォリオのリターンを考えてみましょう。
ポートフォリオのリターンは次のようになるのでした。


R_p=\frac{X_{p,1}-X_{p,0}}{X_{p,0}}=\frac{X_{p,1}}{X_{p,0}}-1


ここで、一番右端の式の
\frac{X_{p,1}}{X_{p,0}}に注目します。


X_{p,1}=X_{a,1}+X_{b,1}だったことを思い出して、分子に代入すると、



\frac{X_{p,1}}{X_{p,0}}=\frac{X_{a,1}+X_{b,1}}{X_{p,0}}= \frac{X_{a,1}}{X_{p,0}}+ \frac{X_{b,1}}{X_{p,0}}


足し算に分解できました。分解出来た足し算の1項目を取り出してみましょう。



\frac{X_{a,1}}{X_{p,0}}


これを次のように強引に分母をいじってやれば、株式aのリターン
R_aが出てくることがわかりますか?



\frac{X_{a,1}}{X_{p,0}}=\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}\frac{X_{a,1}}{X_{a,0}}=\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}(\frac{X_{a,1}}{X_{a,0}}-1+1)=\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}(R_a+1)


こうして先ほどの足し算を次のように変形できます。



\frac{X_{p,1}}{X_{p,0}} \\
=\frac{X_{a,1}}{X_{p,0}}+ \frac{X_{b,1}}{X_{p,0}} \\
=\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}(R_a+1)+\frac{X_{b,0}}{X_{p,0}}(R_b+1)
=\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}R_a+\frac{X_{b,0}}{X_{p,0}}R_b+(\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}+\frac{X_{b,0}}{X_{p,0}})


最後の項の
(\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}+\frac{X_{b,0}}{X_{p,0}})
ですが、
X_{p,0}=X_{a,0}+X_{b,0}であることを思い出すと、1になることがわかります。以上より



\frac{X_{p,1}}{X_{p,0}}=\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}R_a+\frac{X_{b,0}}{X_{p,0}}R_b+1


長々数式を書きましたが、これで最後です。ポートフォリオのリターンの式を思い出してください。



R_p=\frac{X_{p,1}-X_{p,0}}{X_{p,0}}=\frac{X_{p,1}}{X_{p,0}}-1=\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}R_a+\frac{X_{b,0}}{X_{p,0}}R_b+1-1=\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}R_a+\frac{X_{b,0}}{X_{p,0}}R_b


ポートフォリオのリターンは投資先である株式aと株式bのリターンで表すことができちゃいます!


ちなみに上の式で各株式のリターンにひっついている
\frac{X_{b,0}}{X_{p,0}}や、
\frac{X_{a,0}}{X_{p,0}}のことを各株式の投資比率と呼びます。

よくよく式を見てもらうとわかりますが、元手の内aに投資した額はいくらか、元手の内bに投資した額はいくらかという比率になっていることがわかります。そういうわけで投資比率と呼んでいます。

2資産ポートフォリオのリターンまとめ

つまり、以上のことからポートフォリオのリターン
R_pは、投資した株式a,bのリターン
R_a,R_bと、株式a,bに対する投資比率
w_a,w_bを使って次のように表すことが出来ます。



R_p=w_aR_a+w_bR_b

投資のリスク分析等はこのポートフォリオのリターンを使って行っていくことになります。
次回はこのポートフォリオのリターンの詳しい性質や資産を増やした場合のリターンについても説明します。

【初心者向け】投資のリターンとは?

前回の記事で、株式投資とは何かという説明を簡単にしました。
bananarian.hatenablog.com


そこで今回は投資を評価するためのキホンのキである投資のリターンについて説明していこうと思います。

具体例

△月t日に今私たちは投資を行おうとしています。試しに10万円分の株
X
を購入したことにしましょう。この株はt日に購入したわけなので、区別するために
X_t
と名付けておきます。

この株が翌日の△月(t+1)日になんと11万円になっていました。とりあえず1万円儲かるし売ってしまおうかな?といったことを考えると思います。この翌日の株を
X_{t+1}
と呼ぶことにしましょう。

この時、単純な儲けは
11万円-10万円=1万円
となるわけですが、それだけでなく投資額に対してどれくらい儲かったかを知りたい時があります。

どういうことかというと、例えば1000億円持っている人にとって1万円は僅かな額に思えます。しかし、10万円しか持っていない人にとっての1万円は、前者よりも相対的に価値が高いと思いませんか?

つまり、同じ1万円であっても、元手(いくら投資したか)がいくらかで価値が変わってくるんです。

そう考えると1万円を1万円のまま考えるのはまずそうです。元手を使って調整する必要があります!

この考え方を用いて投資の利益を考えようとするのが投資のリターンになります。具体的には次のように計算します。

この時、単純な儲けは
11万円-10万円=1万円
ですが、元手(最初に支払った額)が10万円なので、それを使って次のように調整します。

\frac{1万円}{10万円}
これがリターンです。つまり今回の投資のリターンは

\frac{1万円}{10万円}=0.1
つまり10%となります。


一般化してみる

先ほど名付けた
X_tとX_{t+1}
を株価だと思って、今の話を少し一般化してみます。

利益はt+1時点で売った時に得られた額と投資した時点での額の差になるので

(儲け)=X_{t+1}-X_t
それを買った時の価格で調整してやればリターンが出てくるので

(リターン)=\frac{X_{t+1}-X_t}{X_t}=\frac{X_{t+1}}{X_t}-1


投資した時点での価格が105万円、売却時の価格が110万円だったとします。配当等は無いものとして、この時のリターンはいくらになるでしょうか。


\frac{110万円-105万円}{105万円}≒0.0476

よってリターンはおよそ4.8%ということになります。


リターンを考えることで何が嬉しいか

で、このリターンですが、「そういう風に計算できることはわかったけど、これが出せたから何??」と思う人もいると思います。

株式投資を行うにあたって、元手を使ってどの企業の株式を購入するべきかを考えることになるわけですが、投資の鉄則として1種類の株式に全額投入するべきではありません。普通は複数の企業に対して投資を行います。これを分散投資と呼びます。

何故、分散投資を行う必要があるかというと、例えば次の例を考えてみてください。


例えば来年、オリンピックによって外国からの観光客が増え、東京周辺のホテルビジネスが大繁盛すると考えたとしましょう。そうするとホテル業界の株価が上がると予想できるので、ホテルを運営している会社に投資を行います。しかし、何やら来年のオリンピック、準備不足であまり魅力的ではない大会になる恐れも十分にあります。前評判が非常に悪く、あまり外国人観光客が集まらなかったら、先ほどの予想はご破算です。むしろ期待によって本来の価値以上に上がっていたホテル業界の株価は下がるかもしれません。そんな時、持ち金全部ホテルに投資しているとまずいですよね?

そこで、オリンピックが振るわなかったとしても上がる株にも投資しておきます。
例えば建築業界です。オリンピックに向けて施設やアミューズメントパークの建築を請け負う建築業界は、オリンピックが振るうか振るわないかに関わらず事前に依頼を受けるため、業績は上がります。その結果、ホテル業界で株価が下がったとしても建築業界の株式の上昇分で相殺できるし、ホテル業界の株価が上がったとしたら、めでたく儲けを得ることが出来ます(※1)。


話が長くなりましたが、何が言いたいかというと、各企業の株式の価値を考えるだけでは不十分で、各企業の株式の組み合わせを評価して、リスクが小さい投資方法で投資をすることが望ましいということになります。

この各企業の株式の組み合わせをポートフォリオと呼んだりします。

このポートフォリオを評価するためには、結局元手に対して得られる儲け、つまりリターンがどうなるかを考える必要があるわけです。



次回はポートフォリオのリターンの考え方について書こうと思います。



※1
ここで、それならばホテル業界に投資せず、建築業界に全投資すれば良いじゃないかという文句もあると思います。ここでは一旦具体例ということで、建築業界は安定しているが儲けも少ない、ホテル業界はリスクもあるが当たると儲けが大きいと仮定してください。建築業界に全投資するとリスクは少ないけど儲けも小さくなってしまいます。そこで、多少のリスクは受け入れつつホテル業界にも投資しようといった判断をしているわけです。

【初心者向け】わかりやすい株式投資の話

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皆さんは株式投資と聞いて何を思いますか。

「お金を稼げる」
「よく知らないけど危ないんでしょう?」
「よく聞くけど何なのかよくわからない」

色々と思うところはあると思います。

株式投資危ない。確かにそうかもしれません。失敗したらお金を失うし、リスクが伴う....

しかし、それは世の中の投資家が適当に株式投資を行っているからリスクが高いと言われているだけなんです。

しっかり理論を学んで基礎を固めれば、正しい分析のもと安全に運用を行うことが出来ます!



何故こんな話をしたかというと、このブログでも投資理論の話、それを用いた実用的な話をしていきたいわけです。5ヵ月後くらいには株式投資のみならずデリバティブ取引や、ブラックショールズモデルの記事を書こうと思っているのですが、その前段階としてブログで導入をしておこう、そんな心持で書いております。


ところで株式って何?

株式とは、株式会社が発行している社員になれる権利です。

「「え?じゃあ、株式を買うとその会社で働かなきゃいけないの??」」

そんなことはありません。ここで言う社員は従業員のことではありません
ここで言う社員は別名株主。つまり株式を購入するとその会社の株主になれるんです。

株主になれると何が嬉しいの?

株式って購入しようとすると結構高いです。基本的におまとめ販売しかしていないので、購入するには10万円くらいは必要です。
じゃあ、そんな金をはたいて買った株主になれる権利なわけなので、株主になるとどんな良いことがあるのか気になってきます。

株主は、その会社の方針の決定や、役員の決定に関わることが出来ます。つまり株主になるとその会社を操れちゃうわけです!すごい!

実際にその会社の発行している株式を過半数以上持ってしまえば大抵の意思決定を掌握することが出来ます。
他にも株主優待特典や、会社が出した利益の一部を受け取れる配当なんてものもあったりします。


じゃあ株式投資って何?

実はこの株式、価値がコロコロ変わります。価値が変わるってイメージがつきにくいかもしれませんね。

近所にあるスーパーを想像してみてください。例えばキャベツ。つい1週間前は120円だったのに、今日は198円になっていたりします。1週間前よりもキャベツの価値が上がっていますね。

キャベツと同じです。株式も価値が週によって、日によって、もっと細かく秒単位で変化します。
ここでよく考えてみてほしいんです。キャベツと違って株式は腐ったりしませんし、インターネットを通じて即座に買ったり売ったり出来ちゃいます。

例えば8月25日にある会社の株式が1株100円だったとしましょう。それを購入したとします。翌日8月26日、その会社の株式が1株200円になっていたとします。100円で買ったものが200円になっていたら、単純に売ってしまえば100円儲かりますよね。

これが株式投資です。安い時に買って、高い時に売ると儲かる。
同じことをキャベツでしようとしても出来ません。8月25日に買ったキャベツは鮮度がどんどん落ちていきますから、仮に値段が上がったとしても皆スーパーに売っているキャベツを買います。腐ったキャベツは誰も買ってくれません。


株式投資で損をするってどういうこと?

安い時に買って、高い時に売ればいいんならとても簡単じゃないか!そんなうまい話あるわけがない!!

そう思った方、鋭い。

そう、正確には、「安い時に買って、高い時に売ればいい」それがとても難しいんです。

またキャベツを思い浮かべてください。皆さんは日ごろスーパーで「今日はキャベツが高いねえ」とか「今日はキャベツが安い!」とかいう話をするわけですが、キャベツが安いとか高いとか何で判断しているんでしょう?

例えば幼いころ、まだスーパーで買い物をしたことのなかった頃キャベツの価値なんて判断できなかったはずです。

私たちは毎日、もしくは毎週スーパーに通い詰めて、毎度毎度キャベツの値段を目にして、学習し、その結果「大体100円近辺の値段だなあ」とキャベツの価値を認識するわけです。だからこそ、急にキャベツが200円になると「高い!!」と思うし、70円になると「お買い得!!」と感じるわけです。


「では、株式投資も価値を判断できるようになればいいわけなので、毎日企業の株式の値段を確認すればいいじゃないか!」


と、思うわけですが、観察してみるとキャベツとの違いにすぐ気が付きます。
キャベツは大体100円~150円くらいで値段が決まっているかもしれませんが、株式の価値は大きく変化します。
とても「いつもは大体このくらいの価格だよねー」なんて判断することができないんです。
だから、安い時に買おうにも、今が安いかどうか人間の感覚では判断できないわけです。


もし、価値が変に高くなっている時に株式を購入したとしたら、いつまで経っても損するだけなので売れません。もしかしたらその会社が倒産してしまうかもしれない。そうなると株式は1円にもなりません!!


株式投資に対する基本姿勢

ということは、ということはですよ。ここまで来ると話は簡単です。
企業の価値、株式の価値を過去のデータを使って評価する理論・方法を使って、その企業の価値が今高いのか安いのか判断してやればよいわけです。
人間の直感では判断が難しいけども、ある程度客観的かつ科学的(社会科学・統計学)な手法で合理的に判断・評価しようとする理論、それが投資理論の実用的な側面です。

更に、投資の前に過去のデータから見て自分の行う投資はどれくらいリスキーかを測って投資すべきか否か判断できるようになれば上出来です。




このような株式の価値、企業の価値を評価する理論・手法は非常にたくさんのものがあり、また、難解です。そのため、一般の投資家はあまりそうした手法を学ばず、自分の直感に合わせてキャベツを買うように株式を購入しているわけです。うまくいったりいかなかったり、株式投資がギャンブルのように見えるのはそのためです。



長々書きましたが、そういう点で学ぶべきことの多い投資理論について、これからゆっくり記事にしていこうと考えています。
次は株式のリターンについてですかね。