バナナでもわかる話

計量経済学・統計学が専門の大学院生です。統計学・経済学・投資理論・マーケティング等々に関する勉強・解説ブログ。ときどき趣味も。極力数式は使わずイメージで説明出来るよう心掛けていますが、時々暴走します。

伊藤清三『ルベーグ積分入門』の1節から6節を整理&概説してみた

テレンス・タオの方が証明で詰まったのもあり、最近は伊藤清三の『ルベーグ積分入門』をやっています。

ルベーグ積分入門


今回はその進捗に関する内容のまとめ記事。間違いあったらご指摘お願いします。
今回の記事内容は、本が手元にあるという前提の解説記事です。

目次

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伊藤清三ルベーグ積分入門とは

今までやってたテレンスタオさんのルベーグ積分本との違いは、次の通り


タオ本

  • 注意や考え方が細かく載っているので、定義の気持ちがわかる
  • 証明に答えがないので、自力で証明する必要がある


清三本

  • 定義の気持ちや考え方に関する記述は少なめ
  • つながりが分かりにくい(曰く、分かりやすく書いているらしい)
  • 証明や問題は全て証明例があり、完全自習用


つまり、証明等は大よそ書いてある(若干補う必要はあるけど)一方、流れが分かりにくく、特に前半あたりで挫折が多い本とのことです。

個人的に読んでみて、確かに前半わかりにくいなあと感じたのですが、特に一般の測度の話とルベーグ測度の話を行ったり来たりしているのと、色々な測度が怒涛に定義されるのでしんどいのかなあといった印象を受けました。

私も読んでいて、どの文字がどの測度??となって混乱してきたので、整理する意味で共有を。

1節から6節まで

概観

概観としてはこんな感じです。
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本のタイトル自体はルベーグ積分入門ですが、前半は基本的には一般の集合で、一般の測度の話をしています。
そして、例と言った形で \mathcal{R}^nの空間に限定し、ルベーグ測度の話を行っています。

恐らくここがうまく整理できるかどうかがキモなのかな?と思っています。

4節

有限加法的測度

4節では、以下の条件を満たす、空間Xの部分集合族 \mathscr{F}を考えます。

(1)  \phi\in \mathscr{F}
(2)  A \in \mathscr{F} ⇒ A^c \in \mathscr{F}
(3)  A,B \in \mathscr{F} ⇒A\cup B \in \mathscr{F}

この、3条件を満たすXの部分集合族を有限加法族と呼びます。

この性質を持った集合族は、見た目以上に良い性質を持っていて、この3条件を用いると、性質(4,4),(4,5)も得られます※。
※詳しくは本文参照


で、この本の何が厄介かというと、しれっと例1という形でユークリッド空間 \mathcal{R}^Nに関する話をしているにもかかわらず、この例1を読み飛ばしてしまうと、その後の話が意味不明になってしまう点です。例もしっかり読みましょう。

例1では、ユークリッド空間 \mathcal{R}^Nで作った区間塊の全体集合は有限加法族であるということを確認しています。

有限加法的測度

次に、さっき考えた有限加法族 \mathscr{F}の上で次の条件を満たす集合関数 m(A)を考えます。

(1)  全てのA \in \mathscr{F} に対し、0≦m(A)≦\infty 特に、 m(\phi)=0
(2)  A,B \in \mathscr{F},A \cap B = \phi ⇒ m(A+B)=m(A)+m(B)

この条件を満たす集合関数 m(A)有限加法的測度と呼びます。

当然一般の集合の話で考えています。
この有限加法的測度 m(A)が感覚的には面積(体積)のことです。体積を測りたいからこそ、範囲は0以上の値を取る、排反な集合を2つ考えて、その面積を取ると2つ目の条件が成り立てば嬉しいよねというわけです。

で、例のごとくまた上記2つの条件から他にも嬉しい性質が導かれるので、それについて確認しているのが(4.13'),(4.14),(4.15)になります。


流れを追うために重要なのはその次の例2と定理4.2の記述で、ザックリ述べると

有限加法的測度 mが、ユークリッド空間 \mathcal{R}^Nの区間塊全体の集合(これは先ほど述べたように有限加法族)上で完全加法性を満たす条件って何??ってのを議論しています。

ここがルベーグ測度に繋がります。


直観的には面積を考えたい集合を大きな集合で覆って、外側から測るといったことがやりたくて、

それを導入として区間塊で考えたいので、区間塊を定義する関数の右連続が重要になるわけです。

その話をしたいがために、例を含め定理の証明を行っています。
例と書いている割に、この話が今後平然と使われていくので、読み飛ばすと訳が分からなくなります。

ちなみに、普通の区間塊(普通の意味での体積)を考えた場合、これは完全加法的な測度となります。

5節

外測度

はい。4節後半で散々ユークリッド空間上の話をして、体力を持っていかれたと思えば、5節ではまた一般の集合の話に戻ります。
一旦ユークリッド空間は忘れて、 \mathscr{F} m(A)の頭に戻してください。

今度は空間 Xの全ての部分集合 Aに対して集合関数を定義します。

さっきの mとの違いに注意してください。先ほどの集合関数 mは条件を満たす集合族に関して定義した関数でしたが、今度は空間 Xの部分集合全体に対して定義します。


それでは改めて。空間 Xの全ての部分集合 Aに対して集合関数 \Gammaが次の条件を満たすとき、これをカラテオドリ外測度と呼びます。

(1)  0≦\Gamma(A)≦\infty  \Gamma(\phi)=0
(2)  A \subset B ⇒ \Gamma(A)≦\Gamma(B)
(3)  \Gamma(\bigcup_{i=1}^{\infty} A_i) ≦\sum_{i=1}^{\infty} \Gamma(A_i)

これで、一般の集合に対して新しい測度(面積の測り方)を定義出来ました。

有限加法的測度と外測度の関係

ここまでで、有限加法的測度、外測度について定義しました。

定義は行ったわけですが、このままではこの2つの測度の関係がよくわかりません。
そこで、定理5.1があります。

定理 5.1をザックリ述べると以下のような感じです。

  • 任意の A \subset Xについて、高々加算無限個の集合 E_n \in \mathscr{F}でAを覆うと、 inf \sum_{i=1}^{\infty} m(E_n)は外測度 \Gamma(A)になります。

まず、先ほど確認したように、 \Gammaは空間 Xの全ての部分集合について定義しているので、任意の Aについて値を取ります。また、 m \mathscr{F}上で定義した集合関数なので、 \mathscr{F}の要素 E_nについて値を取ります。

Xの任意の部分集合 Aを覆う集合を考えることで外測度と有限加法的測度を結びつけることが出来ました。後はこれが本当に外測度なのかを本文では証明を通して確認しています。劣加法性の証明は慣れるまで難しいかもしれません。

  •  m \mathscr{F}上で完全加法的ならば E \in \mathscr{F}について \Gamma(E)=m(E)である

この性質が地味に後で効いてきます。察しの良い人であれば、先ほど述べた「普通の体積を考えるような区間塊の集合全体を考えると完全加法的」という話が繋がるのだな~となるかもしれません。

ルベーグ外測度

要は、直方体のような形の区間塊全体の集合は、有限加法族であり、そこから定義した有限加法的測度は完全加法的なので、外測度に一致する。と言いたいわけです。ということでそのような流れで定義した外測度 \mu^*をルベーグ外測度と呼んでいます。

可測

外測度は先ほど述べたように、 Xの全ての部分集合について定義した集合関数でした。 \Gammaは全ての部分集合について定義した関数なので、有象無象について値を取ります。それを、面積を考えるのに妥当な集合に絞りましょうという話をしているのが可測の話です。

この可測に関しては、伊藤清三さんの本は若干わかりにくいかもしれませんね....タオのルベーグ積分入門では、リトルウッドの三原則から丁寧に説明しています。

ルベーグ積分入門

伊藤清三本ではリトルウッドの三原則の話を雰囲気で説明したあと、事実上カラテオドリの可測条件から可測集合を定義しています。


 \Gamma-可測集合全体を \mathscr{W}_{\Gamma}と置きます。

6節

測度

6節ではまた一般の測度について考えます。しかも、今回は有限加法的測度とか外測度とかではなくて、より一般の測度です。

測度空間と外測度の関係

で、ここで話の流れとして何が重要になるかというと、定理6.1で

空間 Xで外測度 \Gammaを定義すると、 \Gamma-可測集合全体 \mathscr{W}_{\Gamma}はσ-加法族になることを示すことで、 (X, \mathscr{W}_{\Gamma}, \Gamma)は測度空間になることがわかります。

つまり、整理すると

4節で有限加法的測度を定義し、5節で有限加法的測度と外測度を結び付け、更に可測な集合について定義しました。そしてこの定理によって、その外測度と可測な集合全体で測度空間を作れるということがわかりましたというわけです。

ルベーグ測度

定理6.1の後に書かれているコメント、ここで定期的に出て来ていたユークリッド空間について考えています。

5節でユークリッド空間について、有限加法的な測度の性質を備えたルベーグ外測度を考えたので、それを利用して可測な集合全体を考えると、定理6.1から測度空間を定義できます。こうして構成した測度を \muと書き、ルベーグ測度と呼びましょうというわけです。


こうして、体積の概念(区間塊の集まり)の自然な拡張であるルベーグ測度が完成しました!めでたしめでたし!

というわけです。


以降のページでは、 \muはルベーグ測度の意味で用いたり、一般の測度の意味で用いたり混在します(ややこしい!)。

あと残りの6節のページは一般の測度の性質についての証明がズラズラと並んでいるという構成です。




以上でした!これで全体の流れを捉えた後に、また細部に戻り、詳しい性質及び証明を確認すると意味が分かると思います。