バナナでもわかる話

開設当初は計量経済学・統計学が専門の大学院生でした。今はデータを扱うお仕事をしています。統計学・経済学・投資理論・マーケティング等々に関する勉強・解説ブログ。ときどき趣味も。極力数式は使わずイメージで説明出来るよう心掛けていますが、時々暴走します。

私が敢えて高校の進路調査で文系を選択した理由と文系不要論について

ここ最近、このブログも少しずつ読者を増やしつつあり、多くのお問い合わせ(質問)を受けるようになりました。

その中で結構多い質問が 「何で、文系の大学院所属で、統計学や数学に関心を持ったのですか?」 といった質問です。

確かに日本の大学進学の現状を考えると、文系をネガティブな理由で選ぶ人が多いのは経験的に確かだと思いますので、「文系ってことは、恐らく数学好きじゃなかった(もしくは苦手だった)んでしょ?」という前提が含まれるのは仕方のないことかと思います。


でも私の場合、実はそうではないんです。そして、これも文系の研究科に所属してみるとわかることですが、文系をポジティブな理由で選んでいる人というのは結構います。今回はそんな話。

目次

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何で、文系の大学院所属で、統計学や数学に関心を持ったのですか?

「何で、文系の大学院所属で、統計学や数学に関心を持ったのですか?」

この質問、このブログのお問い合わせフォームからだけでなく、就職活動中もほとんどの企業で質問されました。

私は、夏秋インターンを経て「自分は、文系募集の職種は向いてないな~」と漠然と考えていたので、就活においては理系募集の職種や技術系職種にエントリーしていました。

そのため、自分の実績や経歴、興味等々を面接中にお話すると、ほぼ100%、

「そんなに、数理的な話に関心があるのに、何故文系を選択したんですか?」

と聞かれました。

やはり、経歴上は文系顔している人が「数理的な話が好きで自主的に勉強していて、こういう研究をしたりもして~」なんて話をすると、皆さん当然感じる疑問のようです。

この疑問に答えるためには、私が当時、どのように考えていたのかを振り返らねばなりません。

高校2年生当時の私

高校時代、私は正直言って、部活と受験しか頭にありませんでした。

当然(?)、経済学に興味があったわけでも統計学に興味があったわけでもないし、理学部と言われても何をやっているかピンとこないし、 正直漠然と

文系は「なんか歴史とか文学とかそういうとこ」
理系は「ロボットっぽいものを扱ってるイメージ、あと数学?」

みたいな感覚しかありませんでした。


ところで、そんな私の得意分野は「数学」でした。苦手な科目は「英語」と「国語」

特に英語はダメダメで、中学校の時から苦手意識を持っていました。中学時代に通った塾で、1年中小テスト最下位(又は最後から2番目)を取り続けたのは良い思い出です。国語は、現代文もイマイチでしたが、特に古文がダメダメでした。高校の小テストか何かで12回追試(同学年内最多回数)を受けるダメダメっぷりでした。

まあ今考えると、数学に関しても、例えば難関全国模試で上位に入るほど得意とか、中学や高校の頃から高木貞二とか伊藤清三を読んでいたとかそういうレベルではないので、別に得意かと言われると微妙ですが、少なくとも自分の中での相対評価としては、「数学」が安定的に点を取れる科目でした。

地方の自称進学校で、「僕は数学が得意です」と言ってもバカにされない程度の実力ってやつです。全国で見れば平々凡々って感じかと思います。

そして、好きな科目は、もちろん「数学」、次点で「日本史」でした。

そんな感じの高校2年生の私ですが、理系へ進むか文系へ進むか、進路希望調査にあたっては迷わず 「文系」 を選択しました。 その時の私の考えは以下の通りです。


「数学」は自分の好き、かつ得意な科目なので、恐らく大学に入っても自分で勝手に勉強する

「国語」や「英語」は正直面白さがわからない、ただ、自分が苦手だから面白くないのか、それとも面白くないから苦手なだけなのかがよくわからない。文系科目を面白くないと断じるのは、その科目にある程度詳しくなってからでないと失礼だ

・むしろ、苦手な科目を勉強しなければならない環境に身を置いた方が、苦手から目を逸らさずに高校生活を終えることが出来るし、それでそうした科目の面白さに気付ければ一石二鳥かもしれない。

・自分は今まで学校で学んできた、所謂受験科目にしか詳しくない。そのため、自分の興味のある分野を現段階で確定させるなんてことは出来ない。それならば、詳しくなった段階で、自分の興味に合わせてシフト出来る進路選択をすべきである。

・経済学部は、経営学といったビジネスサイドに寄った分野もあれば、経済史といった人文学に寄った分野もある一方で、経済学に特化すると数学をバリバリ使うらしい。外国のことについて関心が出れば、一つの国に焦点を絞って実証研究をすることも出来る。経済学部へ行って自分の興味に合わせて勉強を続け、自分の興味関心がどの方面にあるのか決定してから、自分の進む道を決めても遅くないはずだ。



こうして私は、「文系」を選択すると同時に、「経済学部」へ進むことも決めました。

要約すると

私は数学が得意で国語と英語が苦手だから文系ヘ進み、自分の興味関心をよく理解してから進路選択をするために、選択肢の広い経済学部を選んだ。

ということになります。*1


現在

で、その結果がコレです笑

結局数学っぽいことをしています。
当然数学科の方たちや数理の専門家の方と比べると、お遊戯というか厳密性に欠けるというか、なまっちょろい数学をするに留まっていますが。


ただ、その一方で大学へ入ってからもうかれこれ4年、個別指導塾で高校生向けの古文と現代文の講義もしています。

実は、受験勉強を経ていつの間にか、国語が得意科目になっていました。特に古文が好きで、古文に至っては、趣味で大鏡や源氏物語、万葉集を買ってきて読むほどのハマりようで、最終的には模試等で出題される文章、大抵読んだことがある状態になっていました。本試験でも実際に読んだことのある文章が出題され、楽々に解答することが出来ました。


現在の研究は数理統計学関連の研究、就職においても、数学や統計、それからプログラミングを利用する職種で、結局の所進む道は、当時でいう所の「数学」「理系っぽい」分野になってしまいましたが、文系を選択したお陰で古文の面白さに気付くことが出来ました。

また経済学部へ進んだおかげで、文系学問の持っている思想や考え方、思考プロセスなども知ることが出来、主に統計学や機械学習を学ぶにあたっては、文系学問的思想と対比する形で学ぶことが出来ています。

経営学等の授業ではケーススタディを経て、社会に出る前にビジネス理解を深めることが出来ました。

私のこれから進む職種は技術だけでなく、ビジネスにおけるものの考え方が非常に重要になる職種なので、これはアドバンテージになりますし、就職活動中も、グループディスカッション、面接、インターン課題等々様々な場面で役に立ちました。

文系不要論

昨今、巷で文系不要論がよくあがってきます。

「実学的性格を著しく欠いた学問分野は必要か?」

「古文は役に立たないので学生にやらせる必要は無い」

などなど。これらの議論は賛否両論やみません。

当然、どの視点で述べるかによっても意見が変わってくるわけですが、学生が何を学ぶべきかという視点に立った場合において、


私は「自分の興味関心、必要に合わせて好きに学べば、どんなことでも役に立つし、一方で自分の興味関心、必要に合わせて好きに学べない人は、何を専攻してても多分うまくいかないだろうな」と考えています。


別に文系とか理系とか関係なく、数学が必要になったり、興味が沸いたりすれば自分にとって必要な粒度で学べば良いし、古文を好きでやっていれば、職業として活かせるかはさておき、読書幅が増え、普段の生活をより豊かにすることが出来ます。

高校の勉強を職として活かす層は、恐らく大学進学をする層のはずなので、それならば、高校生活が終わってからも4年ないしは6年(又は9年)、好き放題勉強する期間があるわけです。高々大学入学までの3年間をコスパだけに特化したカリキュラムにする必要は無いはずです。

というかそもそも、人生はお仕事が全てではないはずです。

「仕事で役に立つ技術」「仕事では役に立たないけど、生活を豊かにする知識」、これらを各人自分の興味関心に任せて学生生活の中で蓄えていくことができれば、もうそれで十分で、自分が好きに勉強したものは、その人の人生に何かしらの形で貢献するはず。そんなことを考えています。


また日進月歩に最新技術が更新し続ける昨今において、最も重要なことは、「自分の興味関心、必要に合わせていつでも新しいことを学ぶ好奇心」と「その好奇心を満たすために必要なプロセスが自らの中で明確化されていること」であり、

端的に言ってしまうと「知的好奇心」「自分に合った勉強方法の確立」が最も重要なのではないかなと考えています。



なんか、私の進路選択の話と、文系不要論を同時に話したせいで取っ散らかってしまいましたが、そんな感じです(???)。

皆さんはどう思いますか?

最後に癒しの猫

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*1:ところで、ここでナチュラルに理科を無かったものとしていることに今更気が付きました。そういえば自分物理化学関連の話は全然わかりません。一応、経済学には経済物理という分野があり、似た話をやることは出来ますので、そこを取っ掛かりに物理を勉強することは出来ます。まあ経済学は元々物理から着想を得た学問だとかも言われますし、取っつきやすいかもしれませんね。ただ現状、自分の興味に理科が引っかかったことはありません。