難しい記事が続いていますが、前回は分布の差に関する概念として全変動ノルム、マルコフ連鎖の収束に関わる混合時間について、込み入った話は回避しつつ説明しました。
bananarian.hatenablog.com
今回はカップリングという概念を導入します。
スポンサーリンク
マルコフ連鎖におけるカップリング
あくまで一例であって、マルコフ連鎖であれば必ずこれを使えというわけではないですが、マルコフ連鎖の収束の数理で使われるカップリングに次のようなカップリングがあります。
同一の可測空間上の二種類のマルコフ連鎖を考える。この時、カップリングとしてを考える。この時次のような条件を加えたカップリングが便利である。
条件:上のマルコフ連鎖となる。
カップリング時間
更に導入します。今二つのマルコフ連鎖の組を考えているわけですが、XとYが初めて出会った時間をカップリング時刻とおくことにします。
そして、これは利便性の観点からの仮定ですが、一旦であったマルコフ連鎖は以降同じ動きをするものとします。このような仮定をおいても依然マルコフ連鎖です。
カップリング時間は何に使うのか
で、このカップリング時間は何に使うのかというと、前回導入した混合時間の仮定において全変動距離を0から1の小さなεによっておさえていましたが、このカップリング時間を用いて全変動距離を上からおさえて、混合時間を評価することが出来ます。具体的な証明は回避しますが、次のような関係になります。<前回の仮定確認>
全てののうち、あるにおいてとおく。
この時なるεを用意してやると、
この時混合時間は次のようになる。
このですが、離散のばあいであれば簡単に評価してやって混合時間を求めることが出来ますが、これが連続となると簡単に評価することが難しくなります。そこで次の関係を利用してやります。
以上カップリングについての簡単な概要でした。