バナナでもわかる話

計量経済学・統計学が専門の大学院生です。統計学・経済学・投資理論・マーケティング等々に関する勉強・解説ブログ。ときどき趣味も。極力数式は使わずイメージで説明出来るよう心掛けていますが、時々暴走します。

【初心者向け】サスティナブル成長率とフランチャイズ価値モデル

前回までで様々な株式価値評価の方法を確認しました。
bananarian.hatenablog.com

しかし、前回までの問題点は主に次の通りでした。


「「なんか成長率gの決め方雑じゃね???」」


現状の説明では、客観的な指標はなく、分析者が定性的・定量的な指標をもってgを与えてやる、つまり仮定してやる必要がありました。


そこで、企業が提供する財務データを使ってgを与える方法を考えてやろうというのが今回のテーマになります。




財務指標に関して

上場企業は自社の財務データというものを公開しています。


例えばカルビー株式会社であればこんな感じですね。
www.calbee.co.jp

試しに2018年3月期、第1四半期における
有価証券報告書(
http://www.calbee.co.jp/ir/pdf/2017/yukasyokenhokokusyo_20170809.pdf
)を見てみましょう。


これは、要は株主や投資家に対して

今自社の事業はこんな感じですよー

というのを説明している資料になります。


2頁目を見てみると主な経営指標として色々書いてありますね。そこに「純資産額」「純利益」などなど書いてあると思います。
このような企業の公開している財務データを利用して分析しようというわけです。




今回使う財務指標と財務データ

貸借対照表

企業は貸借対照表という表に、自社の全ての資産と、その資産を得るために行った資金運用の内訳を示さなければいけません。

貸借対照表は大まかに言うと下のような構成になっています。
f:id:bananarian:20180917113736p:plain

損益計算書

もう一つ、貸借対照表とは別に、企業は損益計算書というものに、自社の利益構造を示さなければいけません。


この損益計算書貸借対照表の情報を主に利用します。

純資産

貸借対照表の右側にあるやつですね。これについては表で説明しました。


配当

企業の儲けの構造は次のようになります。


f:id:bananarian:20180917122506p:plain
損益計算書の「当期純利益」が貸借対照表利益剰余金に組み込まれる→利益剰余金はつまり、企業の儲けであるが、企業の儲けは株主の儲けである→そこで利益剰余金の中から配当として、株主に還元される→残りは内部留保として、次期にまわされる

企業の配当内部留保の構造はこのようになります。

ROE

 (ROE)=\frac{(純利益)}{(期初純資産)}

このような指標をROEと呼びます。
要は元々持っていた純資産に対して、どれくらい利益を上げることが出来たかを表しますね。

内部留保

 (内部留保率)=\frac{(内部留保額)}{(純利益)}

このような指標を内部留保と呼びます。
純利益に対して内部留保をどれくらい用意したかという指標になります。



サスティナブル成長率

では、成長率の話に入ります。
期末の純資産を B_1,期初の純資産を B_0と置くことにします。

先ほどの話を考えると、もし増資を行わないとすれば次のような関係が成り立ちますね。

 B_1=B_0+(内部留保額)


さらに内部留保率を bとおくと
 B_1=B_0+b(純利益)


そして (純利益)=B_0(ROE)であることに注意すると
 B_1=B_0+bB_0(ROE)=B_0(1+b(ROE))

であることがわかりますね。

つまり、この式から b(ROE)は純資産の成長率を示すことがわかります。


この成長率 b(ROE)サスティナブル成長率と呼びます。



※増資を行わないとすればという点は忘れないでください。あくまでこの成長率は自力のみの成長率を表すという話になります。



フランチャイズ価値モデル

そして、このサスティナブル成長率を、定率成長モデルの成長率 gに当てはめたモデルを

フランチャイズ価値モデル

と呼びます。


※定率成長モデルについては前回の記事参照
【初心者向け】企業の性質を考慮したモデル - バナナでもわかる話


フランチャイズ価値モデルとサスティナブル成長率の解釈

このように、成長率gを財務データを使って当てはめることで、より客観的に、定量的な考え方をもってモデルを構成することが出来ますね。

ただ、先ほども言ったようにこのモデルを扱う上で注意することは、このモデルは再投資を行わない場合、つまり既存事業の価値に関する実態を表現したモデルであるという点であり、このモデルはあくまで外部からの資金調達を行わなかった場合のモデルであることを忘れないでください。