バナナでもわかる話

開設当初は計量経済学・統計学が専門の大学院生でした。今はデータを扱うお仕事をしています。統計学・経済学・投資理論・マーケティング等々に関する勉強・解説ブログ。ときどき趣味も。極力数式は使わずイメージで説明出来るよう心掛けていますが、時々暴走します。

統計検定1級対策問題集~ベータ分布編~

統計検定1級対策のために役立ちそうな計算問題をまとめるやつやっていきます。
統計検定前の最終チェックや、統計検定の勉強何をすれば分からないという場合に活用ください。


今回はベータ分布関連。
ガンマ分布の時と同様、部分積分をループさせる計算がいっぱい出てきます。
ベータ分布は部分積分ゲーなので、手を動かして慣れるのが良いかと思います。


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目次

ベータ分布の特徴

 f(x) =\frac{x^{\alpha-1} (1-x)^{\beta-1}}{B(\alpha,\beta)}
ただし B(\alpha,\beta)=\int_{0}^1 x^{\alpha-1} (1-x)^{\beta-1}dx

・連続値の分布
 0<x<1
 \alpha,\betaは正

非常にゴチャついていて、嫌になるかもしれませんが、よく見てください。
 B(\alpha,\beta)は単なる正規化定数(積分したらうまく1になるよう調整するための定数)に過ぎず、分布の本体は x^{\alpha-1} (1-x)^{\beta-1}であることがわかります。そう思うと、とっつきにくさは多少和らぐのではないでしょうか。

正規化定数の計算

ベータ分布の期待値や分散の導出、その他様々な計算で、次の性質を利用します。

 B(\alpha,\beta)=\frac{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)}{\Gamma(\alpha+\beta)}

 \Gamma()はガンマ関数です。ガンマ分布の記事で嫌というほど使いましたね笑

まず、この性質について確認します。

 B(\alpha,\beta)=\int_{0}^1 x^{\alpha-1} (1-x)^{\beta-1}dx

 =\int_{0}^1 (\frac{1}{\alpha})^{'} (1-x)^{\beta-1} dx

 =\int_{0}^1 \frac{\beta-1}{\alpha} x^{\alpha} (1-x)^{\beta-2}dx

=\int_{0}^1 \frac{(\beta-1)(\beta-2)}{\alpha(\alpha+1)} x^{\alpha+1}(1-x)^{\beta-3}dx

 \cdots

 =\int_{0}^1 \frac{ \Gamma(\beta) \Gamma(\alpha) }{ \Gamma(\alpha+\beta-1) }  x^{\alpha+\beta-2} dx

 =\frac{\Gamma(\beta) \Gamma(\alpha)}{\Gamma(\alpha+\beta)}

モーメント周りの計算

積率母関数は、存在するのですが導出しません。
というのも、ベータ分布の積率母関数はウィキか何かで調べてもらえればわかる通り、複雑すぎて役に立ちません。
実際公式テキスト(2015年出版時点)でも、ベータ分布の積率母関数は一切触れられず、スルーされています。
まあ、なので導出する必要もないだろうというわけで省略します。

期待値の導出

定義に従った計算

定義に従って期待値を求めてみます。
 E[x]=\frac{1}{B(\alpha,\beta)}\int_{0}^1 x^{\alpha} (1-x)^{\beta-1}dx

これも、さっき導出した B(\alpha,\beta)の計算と同様の手順をひたすら繰り返すと、

 = \frac{1}{B(\alpha,\beta)} \frac{\Gamma(\alpha+\beta)}{\Gamma(\alpha)\Gamma(\beta)} \frac{\alpha}{\alpha+\beta}

 = \frac{\alpha}{\alpha+\beta}


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分散の導出

定義に従った計算

 Var[x]=E[x^2] -(E[x])^2

 E[x^2] =\frac{1}{B(\alpha,\beta)}\int_{0}^1 x^{\alpha+1} (1-x)^{\beta-1}dx

これも、次数がズレただけでさっきと同じ部分積分の繰り返しですね。打ち込むのが大変なので省略します笑
一回は出しておいた方が良いと思います。

計算してやると

 Var[x]=\frac{\alpha \beta}{(\alpha+\beta)^2 (\alpha+\beta+1)}

になるはずです。


ベータ分布の導出

実は、ベータ分布は2つの独立なガンマ分布に従う確率変数を用いて導出出来ます。
 x_1 ~ Ga(\alpha_1,\beta)
 x_2 ~ Ga(\alpha_2,\beta)

について、
 X=\frac{x_1}{x_1+x_2}

 Y=x_1+x_2

と置きます。

この時、逆変換した際のヤコビアンは Yなので


 f(X,Y) = Y \frac{\beta^{\alpha_1}}{\Gamma(\alpha_1)} (XY)^{\alpha_1-1}exp(-\beta (XY)) \frac{\beta^{\alpha_2}}{\Gamma(\alpha_2)} (Y(1-X))^{\alpha_2-1} exp(-\beta Y(1-X))

 = \frac{\beta^{\alpha_1+\alpha_2}}{\Gamma(\alpha_1)\Gamma(\alpha_2)} X^{\alpha_1-1}(1-X)^{\alpha_2-1} Y^{\alpha_1+\alpha_2-1} exp(-\beta Y)

 \frac{\beta^{\alpha_1+\alpha_2}}{\Gamma(\alpha_1+\alpha_2)}  Y^{\alpha_1+\alpha_2-1} exp(-\beta Y)   \frac{X^{\alpha_1-1}(1-X)^{\alpha_2-1}}{B(\alpha_1,\alpha_2)}

はい、見事にガンマ分布の密度関数とベータ分布の密度関数の積に分解することが出来ました。あとはXに関して周辺分布を考えてやればよく、ガンマ分布の密度関数は全範囲で積分すると1になるので

Xはベータ分布に従います。

ちなみに、Yがガンマ分布に従うのは、ガンマ分布の再生性からある意味で自明ですね。




ベータ分布と二項分布の関係

ベータ分布の上側確率は二項分布の確率関数の和と解釈出来ます。

 \int_{p}^{1} \frac{x^{k-1} (1-x)^{n-k}}{B(k,n-k+1)}dx =\begin{eqnarray*}
  && {}_n C _{k-1} \\
\end{eqnarray*} p^{k-1} (1-p)^{n-k+1} + \int_{p}^{1} \frac{x^{k-2}(1-x)^{n-k+1}}{B(k-1,n-k+2)} dx

 \cdots

=\sum_{z=0}^{k-1} \begin{eqnarray*}
  && {}_n C _{z} \\  \end{eqnarray*} p^z (1-p)^{n-z}


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